鈴木 ただ、新谷さんが「週刊文春」にいるときに、「週刊文春」の記念号で書いてくれないかと言ってきていたら、お断りしていたかもしれない。僕なりに「文藝春秋」100周年の重みを感じていました。
ただ、全然筆が進まなかったですね。
「謝罪会見の台本を書いた人でしょう?」
新谷 けっこう時間はかかりましたよね。私もしつこくならない程度に「どうですか」とメールを送ると、「今週中には」「ごめん、次の週末には」みたいに延びていったので、おさむさんが苦戦しているというのは感じていました。
鈴木 点と点がつながらないと、なかなか書けない。その点がなかなか出てこなくて、めちゃくちゃ時間がかかりましたね。
新谷 タイトルの「20160118」は、かなり早い段階で固まっていましたよね。
鈴木 あの日が、僕の放送作家人生で一番つらかったですね。新谷さんにカンニング竹山くんのライブ「放送禁止」に協力してもらうために初めて会ったとき、僕に対して、「謝罪会見の台本を書いた人でしょう?」と言ったのを覚えていますか? なんてデリカシーのない人なんだろうと(笑)。でも、新谷さんにそう言われたときに、「人生で一番作りたくないものを作ってしまった」けれど「世の中の人にあの番組を作った人だと思われているんだ」と思ったんです。
あの放送の後、僕のツイッターも荒れました。フジテレビの番組ですが、放送された映像が翌日にはワイドショー素材として全局に配られていました。そんなことはこれまでにないことです。
体調を崩しながらも書き上げた
新谷 ご覧いただいている方はお分かりだと思いますが、小説「20160118」は鈴木さんが放送作家として手掛けられた「SMAP×SMAP」、通称「スマスマ」の公開謝罪会見が生放送で行われた日をテーマに書かれています。
編集部がサブタイトルとして、「SMAPのいちばん長い日」とつけましたが、元ネタは「日本のいちばん長い日」。戦争をやめるという天皇の聖断を書いたノンフィクションですが、SMAPにとってはおそらくあの日が「いちばん長い日」だった。書いているときは、おさむさんは体調を崩したと……。
2023.05.23(火)
文=鈴木おさむ、新谷 学