特定の人種や性別に対して無意識に偏見を抱くのは誰であっても同じ。だからこそ無意識の偏見に気付く努力の大切さが広く語られ、その結果、教育現場や職場環境にも構造的変化がもたらされました。また、アジア人のスーパーヒーローの映画が作られたり、メディアのなかで描かれる人間像にも今までにない変化が見られました。もちろん人種差別やアジア人ヘイトは未だ存在し、分断がなくなったわけではありません。しかし、皆が同じ色になったわけではないけれど、多くの人の共感が「分断を超える」色として交わり、社会の変化を促したことは間違いありません。

 変化というものは起きてから気付くことも多く、起きる前は望む変化後の社会がどのようなものかを想像できずに、諦めの心が先行してしまうこともあります。しかし、こうした激動の時代を生きてみると、「自分の力で変化を起こすことができる」、そして「変化を望んでもいい」と勇気が湧いてくるのです。

「ではどうしたら炎上や分断を超えられるの?」という質問に私も明確な答えはありませんが、心理学も含めた脳科学の知見、そして私自身の経験や子どもたちと過ごす日々から気付かされたヒントをこの本で紹介させてください。


「プロローグ  妊婦のワクチン啓発で気づいたThemとUs」より

2023.05.19(金)