スー はい、もちろん。
有働 『おつかれ、今日の私。』は、私みたいな強者もそうでない方も「うんうん」とうなずけるような内容になっていますね。
スー そうあってほしいですね。大きな主語を使って公的なことを言うより、ごく私的なことを書く方が多くの人に我が事として捉えてもらえるなという実感はあります。
有働 女とは~とか国家とは~ではなく、ジェーン・スーがこう思ったという伝え方の方が響きますか。
スー その方が共感を持ってもらえることが多いと思います。一方で、私はネット上で自分の本の感想を読んでハッとさせられることが多くて。解釈に自分では持てなかった視点があったり、こう言えばわかりやすかったんだという表現があったりして。自分の中にあるものだけだとやっぱり頼りないし、飽きるし。
有働 ああ、わかる。
スー だから読者との対話はすごく大事。それと、自分の中にあるものを外に出して切り離すことで客体化して咀嚼する。だから、誰かと話すのが一番有意義で、そのために生きている感じですね。
有働 そこまで言い切っちゃう!
スー はい。そういう瞬間に「なるほどねー!」と叫んでバターンと倒れて死にたいです。
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「有働由美子のマイフェアパーソン」第52回・ジェーン・スー「ボロボロの友達を慰めるように書く」全文は、「文藝春秋」2023年5月号と「文藝春秋 電子版」に掲載されています。
2023.04.28(金)
文=ジェーン・スー、有働由美子