スー 「行き遅れギャグ」みたいなのを女だけのメンツでもやっていらっしゃいましたよね。なかなか厳しい環境にいるんだろうと思いました。自虐が常態化しているということは、それをやっておくのが自分にとって安全だからじゃないですか。
有働 そうです、そうです!
スー 「有働さん、戦士!」と思いましたよ。その時。
有働 お恥ずかしい。でも今は、自虐をするとむしろ逆効果というか下手したら炎上しちゃうんです。
スー 女性の自尊感情の持ち方について再定義が進んだのは大きいですよね。ヘルシーな変化ではあるけど、過渡期だとも思います。自分のことをちょっと面白おかしく言うことすら他者に咎められるのは行き過ぎとも思うんです。今はみんな受け流す余裕すらないんだろうなと、ラジオをやっていて思います。
有働 例えばどんなことですか。
スー 毎回100件以上来るメールの感想や、放送後のSNSの反応をみていると、みんな傷つきやすくなっているというムードがありますね。今はそのムードから外れると、“異教徒”のように叩かれるから難しいところですね。
有働 炎上してしまうような地雷を踏まないように、気をつけていることはありますか。
スー 必ず反対側の立場の人をフォローする、10年前笑えたことでも今も笑えるかを再確認する、自分が強者であることを絶対忘れない……というくらいですかね。それでも失敗することはありますけどね。
有働 地雷を平気で踏むおじさんたちがいるじゃないですか。政治家とか言論界隈とか。その人たちはどうしたらわかってくるんだろう。
スー 何とも感じていないだろうからたぶん直らないかな。政治家はSNSで何を言われようがそこは票田じゃないと思っている。既得権益を持っている人にとっては、自分たちの階層でしかパス回ししないから直す気もないんだろうなと。
有働 一方で女性の中で言うなら、私も一応、強者ではあると思います。でも強者の中にも弱者の部分が、いっぱいあって。
2023.04.28(金)
文=ジェーン・スー、有働由美子