◆華やかなりし横浜! 憧れのボールルームへ潜入

 さて、ここまでは入館者は誰でも見ることができるロビー。このプランでは、パーティなどでしか入ることができない空間も見学することができます。特に「レインボー ボール ルーム」は宴会のみで入ることができますが、その際はテーブルなどがぎっしりと並んでいますから、ゆっくりと細部を観るまたとないチャンスなのです。

 足を踏み入れて、圧倒されるのがその天井の存在感、美しさ。当時最高峰の技術を使って作られた漆喰の梁と天井。アーチ状なのは、音を美しく響かせるためです。そして、3色の照明が虹のように輝いていて、うっとりするほど華やか!

 正面のステージの両脇には翼を広げたフェニックスの姿があり、ステージを彩っています。

 フェニックス=不死鳥は、ホテルニューグランドのシンボル。それには理由がありました。「横浜に西洋式のホテルを作ろう」と決まったのは関東大震災で横浜が焼け野原になったとき。ホテル名を公募したところ、再生を意味する「フェニックスホテル」という案が多数挙がりました。最終的には「死」という言葉が入るホテル名は回避することになりましたが、ロゴマークのほか、このように装飾や宴会場の名前に名残があるのです。

◆幻のメインダイニング!? フェニックスルーム

 本館2階に位置する「フェニックスルーム」は、開業当時のメインダイニング。高い天井に白いクロスが映える息を飲むように美しいインテリアです。

 椅子も当時のものが使われ、よく見ると修繕の違いなのか、少しずつ違って愛らしく感じられます。

 どこかオリエンタルな空気が漂う理由は、天井や照明の部分によく表れています。寺院によく使われている建築方法で、どっしりとした梁や繊細な作りの大きな照明が特徴的です。

 実は、こちらで不定期に開かれるアフタヌーンティーやランチが大人気。この空間でホテル発祥のナポリタンなどをいただけば、タイムスリップできそう!

◆伝説の部屋315号室、マッカーサーズスイート

 ホテルニューグランドの伝説といえば、ダグラス・マッカーサー元帥。終戦後、日本に降り立ったマッカーサー元帥が直行したのがホテルニューグランドだったというのは有名な逸話です。この日は「マッカサーズスイート」と呼ばれる315室も案内してもらうことができました。

 横浜港に面した明るい部屋では、マッカーサー元帥が使った椅子と机がそのまま置かれ、使用も可能。ほかにもゆかりの写真などが飾られています。2人目の奥さんとの新婚旅行でもホテルニューグランドに泊っていたそうです。

 うれしいことに、宿泊付きではこの部屋もセレクトが可能。ツアーでお話を聞いたあとに泊ると感慨もひとしおです。

 マイスターによるガイドは、ここまで。臨機応変に、楽しく進むので脱線もあるかもしれません。「歴史がある分、何代にも渡って来館してくださるゲストも多く、皆さんから教わることもしばしば。日々進化しているマイスターと楽しく館内を巡っていただけたら」と、認定マイスター。

2023.04.05(水)
文=CREA編集部
撮影=榎本麻美