――そんなご両親は千秋さんに、やはり大きな企業への就職を望んでいたのでしょうか?
千秋 そうだと思います。お母さんは専業主婦だったんですけど、結婚前まではちゃんと仕事をしてて、たしか女性ではじめて英検1級を取得したとかいう経歴がある雑学王。お父さんは京大の大学院を出た理系の人で、うちには完璧な家庭教師が揃ってました。小さいときから親によく「千秋ちゃんは東大にいくよね?」って言われてました。
――それはプレッシャーですね。
千秋 最初は私も「うん、行く!」って気軽に答えてたんですけど、全然無理で。でも、親も大変だったんだと思います。周りのいとこたちは東大や名門大学にバンバン入ってくのに、私だけ「うるせー!」とか言って反抗的だし、勉強もしない。親戚から「あそこの家は子育てに失敗した」って思われてたんじゃないかな。親に申し訳ない気持ちもあったけど、「だって私できないもん!」の方が強かったんです。
――芸能界で成功して、親戚からの見る目も変わったんじゃないですか?
千秋 全然(笑)。親は私が頑張ってるのを認めてくれたけど、親戚の雰囲気はあんまり変わりませんでした。ちゃんとしてるんですよ、本当に。
――硬い雰囲気の中で育ったという千秋さんですが、ご自身はなんというか、とてもやわらかい家庭観をお持ちですよね。結婚・離婚を経たあとも新しい家族を築き、常にオリジナルな道を歩まれている印象があります。
千秋 最初に遠藤くんと結婚したときも「結婚したことないからしてみたいな」と思ってたし、離婚したこともなかったから離婚してみて。その後シングルマザーを10年やってそろそろ飽きたなあと思ったときに再婚のタイミングがあったんです。そういえば再婚はまだしてなかったな、くらいの感じです。
――その軽やかさはどうやって身につけたんですか?
千秋 あんまり意識したことはないんですよね。ただ初婚でも再婚でも、10年後にどうなってるかわからないっていうのは皆おんなじだと思うんです。だから、一度結婚したら「永遠に変更不可!」みたいなのは嫌だなって。まあ、こういうことを言うと怒られたりもするんですけど。
2023.04.06(木)
文=小泉なつみ