――鈴木さんの中で「専業主婦」という選択はなかったですか。
鈴木 うちは母がずっと働いていたので、下の妹2人と「専業主婦には絶対ならないよね」と小さい頃から話していたくらい、仕事を続けることが当たり前という環境で育ってるんです。その代わり、共働きの我が家では習い事や学校の送り迎え含めてずっと祖父母がサポートしてくれていたので、寂しい思いをしないですんだんですよね。
そういった意味で言うと最近、外国人のお友だちが「日本のお母さんは本当にすごい」と言っていて。というのも、ナニーの手を借りることなくみんな家事をこなしているし、子どもを連れて遊んでいる、と。しかも、お母さんと子どものペアを見かけることが多いとも言っていて。
――それは、日本の家庭は、女の人ばかりに家事・育児の負担がかかっているということでしょうか。
鈴木 日本人以外の家庭は、ナニーやお父さんと子どもが一緒というケースも多いんでしょうね。日本の場合、家事・育児を誰かに頼む文化がまだまだ根付いていないですし、自分で何とかしなきゃいけない気持ちが強い女性って多いと思うんです。でも、シンガポールのように、もっと外に頼ることが普通になればいいのに、と感じます。
「夫の付属品」としての立場に悲しくなったことも
――鈴木さんも今まさに、仕事と家庭のバランスを取ろうとしている?
鈴木 まだまだ仕事と子育ての両立に関しては模索中で、霧の中にいる状態です。今33歳なんですけど、20代の頃はバリバリ働きながらやりたいように生きてきて、自分1人でできないことは何もない、そんな気持ちでした。でも、シンガポールに来てからは夫の付属品というか、常に彼に紐付けされないと生活できないことに悲しい気持ちになったことがあります。
――「夫の付属品」とは、たとえばどんな状況でしょうか。
鈴木 シンガポールで携帯電話の契約や銀行口座を開設した時、私のビザは夫の帯同ビザ(家族ビザ)ということもあって自分1人では契約できず、夫のパスポートが常に必要だったんです。だから、銀行や携帯会社にも夫と一緒に行ってもらって。しかも、私の場合ですが、携帯に関しては自分の名義で契約ができず、夫名義で私の回線も契約してもらう必要がありました。
2023.04.07(金)
文=小泉なつみ