また、低価格帯の美容室では、カルテを書かない店も多いです。多くの美容師には、お客様の施術内容をカルテに書き記しておく習慣があります。一日に担当したお客様全員のカルテに記入するのには手間がかかりますが、細かい薬剤の配合や気に留めていた点に至るまで、次回来店時の履歴として活かすために時間を割いています。
低価格帯の美容室では、美容師一人が一日に担当する人数が増えます。このお客様全員のカルテを時間をかけて書き記し、保存しておいても、全員が「2回目の来店」をする訳ではありません。すると、その時間と手間は「無駄になった」とも考えられます。そのため、時短することや、労力を減らすことに比重を置いて、カルテを書かないことが多いのです。
対して高価格帯の場合、一見様より常連の方へのフォローが手厚くなります。低価格帯の場合、「2回目の来店」をしてもカルテを書き残していないため、担当が替わると内容が引き継がれないことも多く、場当たり的な対応になりやすくなります。
安価であるほどヘアケアへの配慮が薄れる
・安価な薬剤を使う
低価格で提供するということは、諸々の運営費用も抑える必要があります。人件費を削ると人材が不足してしまうため、まず削られるのは「材料費」です。
美容室の主要な「材料費」は、カラーやパーマなどの薬剤です。薬剤の価格やグレードはピンキリで、高価であるほど美容師やお客様のニーズに応える、特殊な用途のものになります。
そして当然、低価格帯の美容室では「安価な薬剤」を使うことになります。ですが、薬剤は安価であるほどヘアケアへの配慮が薄れる傾向にあります。
理由は、「高価な薬剤」は“使用感の良さ”を重視して開発されるのに対し、「安価な薬剤」は無駄を省いて安く作られるからです。薬剤は髪にダメージを伴うことがほとんどなので、そのダメージが軽減されるものが良いとされます。ですが、ヘアケアに配慮した原料ほど高価だったり、ヘアケアの成分を添加するプラスの費用がかかることで、「高価な薬剤」は必然的に費用がかかるのです。
2023.03.15(水)
文=操作イトウ