証券会社の口座をチェックすると、どうも母親には内緒で怪しげな外国債券などに投資をしていて、報告書をみるに相当額の為替差損を計上していることも発覚しました。不動産は自宅のほかに賃貸マンションや小さな別荘があったので、これは私が調べておおむねの財産評価を試みました。

 不動産については、土地は路線価評価額、建物は固定資産税評価額をもとに算出するのですが、この基本的な考え方を幸いなことに私が知っていたために、すぐに積算することができました。しかし一般の人ではこうした基礎知識はありませんので、不動産の価値がどの程度であるか見当もつかないのが実情ではないでしょうか。

 ちなみに路線価評価額とは、当該物件に面する道路に付けられた価格で、国税庁が毎年7月に公表しています。この価格をもとに相続税評価額を算出するのですが、現代ではネットで誰でも閲覧することが可能です。建物部分については毎年5月頃に送られてくる固定資産税通知書に土地と建物について評価額が記載されていますので、通知書を保管していれば知ることができます。また土地については固定資産税通知書にある土地に対する評価単価(1㎡当たりの評価額)を7で割って8を掛けるとおおよその路線価単価となります。路線価評価額は、公示地価の約8割、固定資産税評価額は、7割が目安だからです。

 そのことに加えて小規模宅地等の特例の知識があれば、おおむねの評価額がつかめることになります。

 ただ最近では株式や債券の取引などはネットが主流であり、運用報告書なども書面ではなく、本人のメールアドレスなどに直接送付されることが増えています。父親は年齢のわりには、ネット環境に親しんでいたので、何か別の取引もしているのではないかとずいぶん心配しました。本人でなければわからないパスワード、相続財産の申告には必ずしも必要ありませんが、ネット上での様々な会員登録を行っていることによる会費の徴収など、個別取引が主体のネットの世界では、なかなかたどり着くまでに苦労が多いのです。

2023.03.08(水)
文=牧野 知弘