“奇跡の湖”と呼ばれる所以とは

 そんな宍道湖は、“奇跡の湖”とも呼ばれています。

 というのも、今、しじみ漁がさかんなのも、宍道湖・中海の淡水化事業が中止されたから。国によって1963年から着手されていたこの事業は、宍道湖・中海を日本海から閉め切ることで、干拓農地を造成し、農業用水の供給を図ることが目的でした。

 けれど、宍道湖のしじみは汽水域で生息する種。淡水になってしまったら、しじみ漁が続けられなくなる……。

 住民たちによる反対運動や働きかけによって、2002年に農林水産省が中止を決定。環境問題が今ほど注目されていない当時、中海にいたっては8割がた完成していた状態から、計画が白紙になったのは、まさに奇跡と呼べる快挙でしょう。

 そして2005年には宍道湖と中海は「世界的に重要な湿地の保全と賢明な利用」を目的としたラムサール条約にも登録されました。

 宍道湖といえば、「日本の夕陽百選」に選ばれ(島根県立美術館からの眺め)、文豪・小泉八雲も感動したサンセットが有名です。

 地元の人に聞くと、「宍道湖夕日スポットとるぱ」や宍道湖大橋、松江大橋など、それぞれにおすすめの観賞スポットがあるようです。

 ちょっと特別な夕陽を眺めるなら、「宍道湖観光遊覧船 はくちょう」で湖上から日没を迎えるのはいかがでしょう? 運航は終日行われていますが、最終便を利用すれば、サンセットクルーズが体験できます。

2023.02.25(土)
文・撮影=古関千恵子