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朝井まかてさんのマイケルちゃんの死

――理不尽といえば、朝井まかてさんの回でのマイケルちゃんが亡くなったことについて。視聴者を揺さぶる作り方をするのであれば、死で終わらせたり、ナレーションで悲しい雰囲気を演出したりする方法もあったと思いますが、マイケルちゃんがいなくなったあとの朝井さんの日常を捉えていたのが印象的でした。

 あの時は編集上、スタッフと多くの議論を交わしたことを覚えています。朝井さんご自身、美学をお持ちの方ですし、マイケルの死はあったけれども日常は続くということを描いたほうがいいだろうと。

 また、朝井さんも、生きていても死んでいても私にとってマイケルはマイケルとして今もいる、ということをおっしゃっていたので、最後はあえてマイケルがいるところといないところを同じフレームで留めることにしました。「起承転結」ではなく「起承転々」であるというのは、この番組全てに通じていることなのかもしれないですね。

――ちなみに、朗読に俳優の方を起用されている理由も聞かせていただけますか。

 俳優の方々も演じる世界とご自身の実生活との間で行き来があるわけですが、朗読するひとときを我々と一緒に、普段の役を演じるお仕事とも少し異なる、もう一つの異空間のような気持ちで過ごしていただくことができればいいなと。皆さん、主演級の方々ばかりですが、「ちょっと変わった番組ですが、時にはこんな表現の時間を過ごすのもいかがですか?」というようなつもりでお願いをしているのですが、日々の中にある何かを発見することを言葉にすることの楽しさや、朗読を通して今までと異なる仕事の面白さを発見したなど、嬉しい感想をいただくこともあります。

 最近ですと、三上博史さんはずっと前から番組のファンでいてくださったみたいで、番組の時の流れ方に共感してくださっていたのか、お会いした時にはこういう感じの朗読がしたかったんだと熱く語ってくださいました。

 また、竹野内豊さんもこちらがオッケーですと言っても、もうちょっとやらせてください、これはどうですか? こういうパターンもありますけれどと、ご自身が納得がいくまで提案してくださり、表現への尽きない想いを感じました。声だけの表現、朗読に集約されることによって、俳優それぞれの方の想い、美意識みたいなものが炙り出されていくところも、制作する身として楽しく感じているところです。

――声だけだとしても、いろいろな表現があるというのは面白いですね。

 猫という異界の存在がきっかけで生まれた創作の場で、表現者の皆さんの魂に触れるのはいつも新鮮です。上野樹里さんが事前に番組を観てくださって感じた感覚をいかにご自身の朗読表現に生かすか、熱くプランを話してくださった姿も印象に残っています。

 また、尾崎将也さんの回では、尾崎さんがドラマ『結婚できない男』の脚本を担当されていたこともあって阿部寛さんにお願いしたのですが、阿部さんもいつの間にかあのドラマでの役柄が憑依したかのトーンで朗読してくださったのも非常に印象深く、記憶に残っています。

2023.02.26(日)
文=高本亜紀
撮影=平松市聖