2023年に入って新橋・虎ノ門界隈の立ち食いそば屋は寂しい状況が続いている。虎ノ門「峠そば」は1月19日に閉店。「大吉田」は昨年の秋から休業したままである。今年の干支を名のる店「うさぎや」は元気だろうか。挨拶を兼ねて大寒波の中、3年ぶりに訪問してみることにした。

「うさぎや」は新橋駅から桜田公園を通過し環二通り(マッカーサー通り)を渡り少し歩いた所にある。先代の1915(大正4)年の兎年生まれの卯三郎さんが1951(昭和26)年の兎年に創業した。最初は菓子類を売る食堂としてスタートし、1972(昭和47)年から立ち食いそば屋に業態を変えて51年目になる。

まずは「いかかき揚そば」を注文

 午後2時過ぎ、店に到着した。年季を感じる黄色い看板がなつかしい。「天ぷら各種 抜群にうまいつゆの味 手造りの味 ぜひ一度ご来店下さい 味自慢 うさぎや うどんそば」と文字がびっしり。店に入ると3代目の曽我大介さん(45歳)が笑顔で迎えてくれた。今は2代目の曽我日出雄さんと大介さんの2人で切り盛りしている。

 さっそく「いかかき揚そば」(560円)を注文した。「うさぎや」には「えびかき揚」と「いかかき揚」の2つの「かき揚げ」がある。この2つと「春菊天」「なす天」あたりが人気メニューとか。天ぷらも同じビルの5階で毎朝調理している。また1年中「冷し」を食べることができるのもありがたい。「冷し春菊天」は絶品メニューである。

 すぐにどんぶりが到着した。まずアツアツのつゆをひとくち。出汁の香りがじわじわと押し出してくる。鰹節厚削り、鯖の枯節、日高昆布、しいたけ、煮干しを使って毎朝出汁をとる。つゆは赤味を帯びた明るい色のタイプで口当たりが優しくやや関西風。うどんにもよくあう上品な味である。

 

 そばは大手製麺所の茹麺だが、加水が低めで食感がなかなかよい。「いかかき揚」は細く切ったいかを玉ねぎなどと合わせてふんわり揚げている。つゆにほぐれて行き、味が広がっていく。人気になるのもよくわかる。

2023.02.16(木)
文=坂崎仁紀