所長の妻である素子さんや、丹羽さんはヒナコのメンター的な役割を持っていて、女性の生き方や仕事の取り組み方を教えてくれる存在で、ヒナコは彼女たち先輩の背中を見ながら成長していく。特に、丹羽さんのように、非常に仕事ができるのに、結婚や出産で一回キャリアが閉じてしまう女性は多いので、彼女は書き甲斐がありますし、思い入れもあるキャラクターですね。
主人公のヒナコはもともと派遣社員で、資格をとって、「ひよっこ社労士」として仕事を始めたばかりの、不安定な状態からスタートしました。社労士という仕事柄としても、個人の性格としても社会のことが気になるタイプだと思います。
就活を控えた学生にもオススメのシリーズ
毎回のテーマは新聞やテレビで話題になっていることからヒントを得ます。
『希望のカケラ』では、副業問題や、男性の育児休業取得などを扱いましたが、男性の育休はずっと気になっていたテーマだったんです。今作は、特に管理職の立場にある男性に読んでいただきたいと思います。
ヒナコで書いているのは身近なテーマなので、読者の方や、同世代の知人からは「これから就職する子供に読ませたい」という声もいただきますね。
小説を書いている時は、いつも苦しいときのほうが多いんですけど(笑)、書いていると楽しくなってきます。ヒナコが勤める「やまだ社労士事務所」の人たちや、事務所で交わされる会話は書いていて、とても楽しい。
コロナ禍になって、いちばん変わったのは、なかなか対面で仕事の話ができなくなってしまったことです。私はもともと在宅仕事ですが、直接人と会わなければならない職業の人は特に大変だったと思います。
オンラインミーティングは便利ではありますが、距離感が変わったという実感があります。対面でなら感じられる空気感や、ちょっとした表情の変化や声のトーンを読むことが難しくなってしまいましたよね。
たとえば、「そこは安息の地か」は美容院の話ですが、これも、自分が行っている美容院の方から伺ったコロナ禍での状況から着想を得ました。
今作ではコロナの話を書くかは最初に迷ったところなんですが、このシリーズは時代を写す小説なので、いろいろ打ち合わせた結果、コロナのことを背景に入れようということになりました。
2023.02.03(金)