レディー・ガガのヒット曲まで取り上げる驚きの越境性
Decca / (C) Simon Fowler
イタリア、ドイツの音楽をアコーディオンという東欧由来の楽器でプレイすることによって、オリジナルのシリアスなメロディやハーモニーにエキゾチックな活気がみなぎり、生命力に溢れた別の音楽に生まれ変わっているのです。これは、クラシックもルーツ・ミュージックもどちらも知り尽くしている彼だからこそ出来る技。ヴィヴァルディの『四季』の「冬」なんて、震えるほどアコーディオンの音にハマっていて、大きな驚きを禁じ得なかったわ。
とことんボーダーレスでありたい、というのがマルティナスの哲学なのか、レディー・ガガの「テレフォン」や、みずからがヴォーカルを取るブラジルの曲「ノッサノッサ」を並べているのもユニーク。ガガのあのメロディーが、バッハやベートーヴェンみたいに聴こえてくるから不思議です。
地図で見るとリトアニアというのはポーランド、ラトビア、ベラルーシに囲まれ、16世紀には黄金期を謳歌するも、その後は幾度も隣国に分割されるという切ない歴史を刻んできたバルト3国の国(親日家も多いという噂)。マルティナスは抜群の音楽神経で、この国に脈打つ温かい血潮と、フレンドリーなキャラクターを伝えてくる。この大きなパワーを伝えるためには、アカデミックなクラシックのスタイルでは役不足だったのね。踊り出したくなるグルーヴィな名曲が詰め込まれたマルティナスのこのCDは、英国ではクラシックチャートの1位を記録しています。
Column
小田島久恵のときめきクラシック道場
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2013.11.12(火)