――そんな馴染みのないキャラクターをなぜ付録の企画に……?
磯辺 きっかけは新入社員研修で川崎市の藤子・F・不二雄ミュージアムに行ったことなんです。ミュージアムの中に、原作のひみつ道具「きこりの泉」を模して、ポンプを押すと「きれいなジャイアン」が出てくる泉があるんです。結構人気のフォトスポットになっているんですが、それを見て「めっちゃ楽しいじゃん」と思って。当時は、一緒に行った同期も含めて、キャラクターの詳細は全然知らなかった。それでも「コレ、ジャイアンのお兄さん?」とか言いながらみんなで遊んで、それがすごく楽しかったんです。
そこでしばらく観察していたんですけど、特に家族連れの皆さんがすごく楽しそうにされているんですよね。小さい子とご両親が一緒に来て、子どもがすごく喜んだり、子どもだけじゃなくて、お父さんも「来るぞ、来るぞ……上がった!」みたいにめっちゃ楽しんでいた。他にもお孫さんを連れたお爺ちゃん、お婆ちゃんもすごく楽しそうで。そんな風景を見て「これは“全年齢対応型いないいないばぁ”だ……! もしかしてすごいコンテンツなのでは?」と新入社員ながらに心に残っていました。それでずっとメモ帳に残していたんです。
おとな向けのネットミームを学習雑誌の付録にする意味
もともとこの「きれいなジャイアン」は映画版などの作中で時折、急に漢気を見せるジャイアンのキャラクターとも相まって、ネットミーム的にさまざまなところで“イジられて”きていた。
そのためファンからのカルト的な人気はあったものの、逆に言えばそれはあくまで大人にむけたモチーフだったということにもなる。自身の体験による裏付けがあったとはいえ、それを子ども向けの学習雑誌の付録にあえて採用した理由はどこにあったのだろうか?
磯辺 確かにこの付録を作りたいという話を版権元の藤子プロさんに相談した時にも、「これ、子どもは分かりますかねぇ?」と言われたんです。社内でも「これ、子ども向けにしてはニッチすぎない?」という指摘もありました。
2023.01.11(水)
文=山崎ダイ
撮影=平松市聖/文藝春秋