全成と公暁、姿かたちが似ている二人

新納 僕はこれから放送を見るんだけど、公暁(こうぎょう)の去り際も、SNSで盛り上がってましたね。僕は、実は公暁に運命の対比を感じていて。

 演じた寛一郎さんと撮影ではご一緒していないのですが、初めて公暁の後ろ姿が画面に出てきた瞬間に「あれっ、俺?」って思ってしまいました(笑)。そうそう、SNSで大河ファンの方が描いてくださった僕のイラストにも「公暁さんを演じた新納さんです!」って書いてあったんですよ(笑)。

 そんな姿かたちが似ている二人は、境遇も近いんです。源氏の血を引き継ぎながら、若い頃に親元から離され、出家させられて、僧侶の姿で鎌倉に戻ってくるという同じ道を辿る。でも公暁は鎌倉殿に執着して、北条憎しという源氏の魂を強く持っていた。一方の全成は権力に恋々としない、軽やかな人だったなと、興味深く感じました。

宮澤 全成と公暁、そして全成の息子の阿野時元は同じお墓に入っているんですよね。

新納 沼津にある大泉寺というお寺で、エマさんとも一緒にお墓参りに行ったよね。

 

本当に健全な現場…小栗さんと小池さんが心を砕いて

宮澤 一方、義時さんと政子さんは、中心人物でありながら、芝居をひたすら受ける立場です。多くの人の死で血まみれになり、後始末をしながら変わっていく弟。そして変わりたくない姉。二人の葛藤を、小栗さんも栄子さんもとても悩みながら演じていらした。

新納 1年5カ月にわたる撮影の中、小栗さんと小池さんは、みんなが仕事をしやすいように心を砕いて、撮影は本当に健全な現場でした。大泉(洋)さんも含めて、本当に家族のようにまぶしくて、ともするとバラエティー番組を見ているように笑ってしまって。人として尊敬できる俳優さんでした。

宮澤 政子を演じる小池栄子さんは、母親として、女性として、悩みぬいたのだと思います。身内に身内を殺されても赦すことができる、頑ななまでの素朴さも感じました。物語の中心で耐える二人がいたことで、周りにいる人の個性が際立ちました。政子が将軍になった46回は、実衣なんてもう……。

2022.12.29(木)
文=矢内裕子