「洋風サラダそば」は豆腐のカッテージチーズ風、海苔の千切り、有機リーフ(サラダ水菜、ルッコラ、サラダ春菊など)、有機ミニトマト、さらに落花生などがのり、EVオリーブオイルをかけて味をまとめている。つゆは鰹節、宗田鰹、昆布で出汁をとる。返しとのバランスがよい。十割そばは細く喉ゴシも申し分ない。是非再訪したい店である。
高齢者がんばる
そして、今年なんといっても印象的だったのは、お年寄りの店主のがんばりである。60、65歳で定年などどこ吹く風。
丹波屋
新橋駅前ニュー新橋ビル1階にある「丹波屋」の大旦那は今年86歳である。毎日朝から天ぷらを一人で揚げている。出汁は鰹節、宗田節と、日高昆布など2種類の昆布を使う。返しが穏やかな深いつゆを味わえると評判だ。「春菊天そば」は一番人気。細かく切ってかき揚げ状にした春菊天は東京一うまいといわれるほどである。
おばちゃんの店
埼玉県北足立郡伊奈町小針内宿にある「おばちゃんの店」を11月に初訪問した時はとにかく驚いた。原雪子さん(83歳)が経営する創業38年の店である。吹きっさらしのプレハブ小屋のような店舗にお客さんからもらった椅子やテーブルが並ぶ。しかし、その味は絶品だった。
注文した「Aセット(Bin丼・たぬきそば)」(600円)は伊奈学園の生徒さんが土日の部活後に食べに来てくれる人気メニューだとか。「Bin丼」は鶏ムネ肉の天ぷらがのり甘辛いタレがかかったどんぶりですこぶるうまい。「たぬきそば」も青森下北半島の根昆布を使った出汁が十分に香る抜群のつゆ。是非とも来年にまた再訪したいと思う。おばちゃん待っててね。
大衆そば・立ち食いそばの業界は高齢者のがんばりがないと成り立たないと常々思う。他の店にも70歳以上の達人たちが大勢働いている。今後も敬意を払って食べ歩いて行こうと再認識している。
以上から、立ち食いそば的今年の一文字は「再」ということに勝手に決めさせていただいた。
さて、読者の皆様も今年はどんな大衆そば、老舗そばに出会っただろうか。コロナ禍、物価急騰の中、フトコロにも厳しい状況が続いている。来年はどんな素敵なそば・麺に出会えるか楽しみである。年越しそばを食べて良い2023年をお迎えください。
2023.01.01(日)
文=坂崎仁紀