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現存する合掌造りでは最大級の「旧矢箆原家住宅」でひと休み

 聴秋閣周辺をぐるりと散策した後は、織田信長の弟・有楽の作といわれる茶室「春草廬」などを覗いて、外苑の奥に佇む「旧矢箆原(やのはら)家住宅」へ。

 1960年に合掌造りの集落で知られる白川郷から移築された古民家で、現存する合掌造りでは最大級の建物。ここでは靴を脱いで建物内部を見学することができます。

 建物内に入ってみると、畳が敷かれた書院造りと板の間で囲炉裏のある農家造りとで半分に分かれているのがユニークです。

 式台玄関や格式のある書院造りの座敷などを設け、火打窓がつけられていたり、扇がデザインされた欄間があったりと、しつらえも楽しめます。一方、囲炉裏や古い時計、飛騨地方の民具や農具などが展示されている板の間は、薄暗く心落ち着く空間に。

 三溪園では、手入れをし過ぎることなく、野草や蜘蛛の巣といった自然のありのままの姿も大切にしているそう。散策していると、木陰に地味ながら小さな花を咲かせている野草にも目がとまります。

 また、紅葉だけでなく、三溪園は梅の名所、桜の名所としても知られています。2月から見頃を迎える梅は、竜が地を這うような枝ぶりの臥竜梅など、約500本の梅を観賞でき、お花見の時期には、大池周辺の桜がまるで鏡のように水面に映る姿も。開花時期には「観梅会」や「観桜の夕べ」が開催されるので、シーズンに合わせて訪れるのもおすすめです。

 園内には、三渓園ゆかりの美術品や資料を保存する三溪記念館のほか、甘味が楽しめる三溪園茶寮、ラーメンや田楽を味わえる雁ヶ音茶屋、原 三溪考案の三溪そばがいただける待春軒といった食事処が点在しています。

 ランチは散策がてら食事処に立ち寄ってみるのもよいでしょう。原 三溪の美意識に触れながらお腹を満たしたら、もうひとつの横浜のランドマークへ。

三溪園

所在地 神奈川県横浜市中区本牧三之谷58-1
電話番号 045-621-0635
入園料 大人700円 小・中学生200円
営業時間 9:00~17:00(最終入園16:30)
定休日 2022年12月29日~31日
※2022年は施設整備のため、12月26日~28日も臨時休業
https://www.sankeien.or.jp/

2022.12.22(木)
文=大嶋律子