役所広司と吉沢亮が初共演を果たした映画『ファミリア』が、2023年1月6日(金)に劇場公開を迎える。

 『八日目の蟬』や『ソロモンの偽証』で知られる成島 出監督が脚本家・いながききよたかのオリジナル脚本を映画化した本作は、地方で暮らす陶器職人を襲う悲劇や、在日ブラジル人との交流を描く重厚な社会派ドラマ。役所が主人公の誠治、吉沢がその息子でアルジェリアに赴任中の学を演じている。

 差別や暴力といった問題に切り込んだ本作に、ふたりはどう挑んだのか。作品の舞台裏に加えて、俳優としてぶつかる言葉の壁、さらにはおすすめの“作品”についても語っていただいた。

「おかえり」というだけで普通の父と息子に

――おふたりは本作で初共演。親子だけど少し硬さもあって、それがほぐれていき……という関係性が絶妙でしたが、どのようにしてこの距離感を作っていったのでしょう?

役所 どうぞ!(と吉沢に譲る)

吉沢 (役所に会釈したのち)そうですね。特に何か話すということはなく、その場で実際にお芝居をしてみて自然とそうなれた感じがありました。役所さんの存在感が本当に凄くて、父親としてその場にいて下さるからすごく助けられました。

役所 おっしゃる通り、なんとなくぎくしゃくした関係の親子ですよね。実は、成島出監督が準備してくれた「学が誠治のもとに帰ってくるまで」のメモがあるんです。それをお互い共有していて、かつ本編は「おかえり」というところから始まるので、お互いの親に対する接し方・子に対する接し方は自然にできたような感覚です。台本を読んで、メモを見てずっと吉沢くんの顔しか想像していなかったものですから「おかえり」と言うだけで親子になれた気がします。

――登場人物の描かれない余白の部分も多くある作品かと思いますが、そうした“虎の巻”があったのですね。

役所 メモには、誠治の奥さん=学のお母さんが亡くなったときのこと、誠治の義兄夫婦が学の親代わりになってずっと面倒を見てきたこと等々、登場人物それぞれの人生が全部書かれていました。普段僕たち役者はなんとなく想像しながらやっていくものですが、今回はメモがあったのでそれを頼りに考えていきました。ある種、膨大なト書きのようなものですね(※ト書き:台本に書かれているシーンの説明文)。

――おふたりの味わい深い演技がどう生まれたのか、その一端を見た気持ちです。本作は実在のテロ事件をヒントに作り上げたお話と伺いましたが、役所さん・吉沢さんが共に情報解禁時のコメントで「絶望」という言葉を使われていたのが印象的でした。

役所 一番大切なものをなくす、それはやはり絶望としか言いようがありません。テロ事件で傷つき、でもそこからまた生きていかなければならない。そんなときに何が必要なのかはわかりませんけれども、やっぱり人と人の関わりなくしては本当に生きていけないと思うんです。そういった意味では、この映画で色々な救いの手を差し伸べてくれているのかなと感じます。

吉沢 この映画で描かれる絶望はどうしようもない部分というか、被害を受けた人々は何か悪いことをしたわけではない。ただ生まれの問題だったり、そこにいたというだけ。学が巻き込まれる事件もそうですが、自分に非があるわけではないのに暴力を受けてしまう人々がどうやったら生きていけるのか、がこの作品のテーマのような気もします。

 すごく難しいですよね。一言でこう、と言い切るわけでもなく「この問題はやっぱり一人では抱えられないよね」ということを、様々な“抱えている”人々を通して描いているように思います。

2023.01.05(木)
文=SYO
写真=佐藤 亘
スタイリスト=安野ともこ(役所さん)、荒木大輔(吉沢さん)
ヘアメイク=勇見勝彦/THYMON Inc.(役所さん)、小林正憲/SHIMA(吉沢さん)