——執筆の際、ぱーっと書いてから推敲するのか、1文1文じっくり生み出していくのか、どういう感じですか。

河﨑 作品によってですね。たとえば『介護者D』や『絞め殺しの樹』はわりとサクサク書き進められた気がします。特に『絞め殺しの樹』は、あらかじめ舞台となる根室の当時の状況などを大摑みに頭に入れてから一気に書き上げ、後から実際のデータと照らし合わせて細かく調整していくスタイルだったので。

 悩みながら進めているのは、今とりかかっている書き下ろしです。書きながら調べものをしているので、いつもよりだいぶ時間がかかっています。私は書き手としてのスタンスに波があるので、今たまたまそういう時期なだけかもしれませんが。

 いずれにせよ、スランプやストレスを無理に解消しようとすると余計うまくいかなくなるので、なるべく気にせず、朝決まった時間に起きて、決まった時間にご飯を食べて、決まった時間に散歩に行って寝る、というのを心掛けています。そうしたフィジカルに健康でいられるようなルールを課していれば、なにかあった時にも「体は大丈夫なはずだ」と思えるので。

——河﨑さんは安定しているイメージがあったのですが、波があるんですね。

河﨑 はい、「今日はもういいや、猫を抱っこして寝よう」みたいな時期もしっかりあります。今はちょうどその波が来ているので、生温かく見守っていただけましたら(笑)。

 
 

河﨑さんポートレート撮影:深野未季


かわさき・あきこ 1979年北海道別海町生まれ。2012年「東陬遺事」で第46回北海道新聞文学賞(創作・評論部門)受賞。14年『颶風の王』で三浦綾子文学賞を受賞し、16年同作でJRA賞馬事文化賞を受賞。19年『肉弾』で第21回大藪春彦賞、20年『土に贖う』で第39回新田次郎文学賞を受賞。22年『絞め殺しの樹』で第167回直木賞候補。近刊に『介護者D』『清浄島』がある。


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2022.12.23(金)
インタビュー・構成=瀧井 朝世