この記事の連載
- 5ツ星お米マイスター・澁谷梨絵 #1
- 5ツ星お米マイスター・澁谷梨絵 #2
震災を経てついにデビューを果たした福島のお米
「東日本大震災前から、14年かけて品種改良されてきた福島県のトップブランド福、笑いが、令和3年にデビューしました。最近はあっさりめのお米が人気なのですが、こちらは粒立ちがしっかりしていて、甘みがしっかり。弾力もあり、噛むごとに甘みが出てきます。魅力的なのが、炊き上がり直後はまるで料亭で出る白米のようで、少し置いておくともちもち甘い。二度おいしいお米です。
ちなみに、デビュー直後のお米はぜひ食べてみてほしいですが、本来の実力=おいしさが発揮されるのは2年目。今年が食べどきのお米です」(澁谷さん)
進化が止まらないお米業界で原点回帰の波も
「毎年、驚くほどたくさんの新品種が出てくるのですが、いわゆる“昔のお米”に注目が集まっている一面もあります。作り始めている意欲的な農家もあるし、求めている消費者もいるようです。
例えば、コシヒカリのルーツともいわれる亀の尾は日本酒にも使われていますが、ぱらりとした粒感に惹かれるお寿司屋さんや料理店も多いようです。
また、岐阜県の『ハツシモ』は通称・幻の米。他県ではほとんどつくられず、県内で食べられています。大粒で弾力があり、ひと口ひと口、食べる楽しみがあります。お弁当やお寿司にもぴったりです」(澁谷さん)
ガイドラインを見て選ぶ消費者も急増中
「実際に売り場を見ていると、お米がどのように育てられたのか、ガイドラインを気にする方が増えています。減農薬や無化学肥料を、少し高くても選ぶ。
いわゆる自然栽培で“奇跡のリンゴ”の木村秋則さんはさまざまな農作物をつくって、自然栽培の確立に心血を注ぐなか、お米もつくっていたそうです。その方法を勉強されている米農家さんも増えています。
実際、この育て方はスパルタ系。お米にとって過酷で、ちゃんと収穫できるまでに7、8年はかかるでしょう。雑草を手で抜くなど手間暇をかけて、何年も何年も諦めなかった稲はしっかりと根を張り、素晴らしい味になります。その分確かに高級ですが、そういう敬意を込めて一度は食べてほしいですね」(澁谷さん)
さあ、今年買いたいお米は決まりましたか? 次回は、澁谷さんに「おいしいお米の炊き方」の正解を教わります!
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2022.11.16(水)
文=CREA編集部