考えてみれば、語学の天才が本当に存在するのなら、著者が追いかけないはずがない。1億光年だろうがもっと遠かろうが、なんらかの方法で見つけ出そうと努力するのではないか。
著者による学習法だけが知りたければ、第5章にたった3行でまとめてある。だがそこだけ拾い読みしても、得るところは何もない。一方でエピソードに笑い転げたりハラハラしたりしながら、自分の語学を振り返る気持ちがあれば、本書はわたしも含めた天才ではない人に、「語学愛」を伝えてくれるのである。
たかのひでゆき/1966年東京都生まれ。ノンフィクション作家。早大探検部時代に書いた『幻獣ムベンベを追え』でデビュー。『謎の独立国家ソマリランド』で講談社ノンフィクション賞。他の著書に『辺境メシ』『幻のアフリカ納豆を追え!』等。
くろだりゅうのすけ/1964年東京都生まれ。神田外語大学特任教授。著書に『チェコ語の隙間の隙間』『はじめての言語学』等。
2022.11.02(水)
文=黒田龍之助