アブストラクトでリズミカルな絵画の魅力

(C) The Metropolitan Museum of Art

 今回の展示では、3つの時期のなかでもバウハウス時代に力点が置かれている。出品作のひとつ「Fire in the Evening」(1929)に見られるように、この時期はアブストラクトでリズミカルな画面構成が際立った作品が多く、クレーの国際的な評価を決定づけることになった。

 詩的な作風から「孤独な夢想家」とも評されるクレーだが、彼には優れた理論家としての一面があった。自由な着想や即興性を重んじる一方で、作品制作の方法に関しては厳密さを貫いた。例えば、個々の作品には彼自身が編み出した分類システムによって通し番号を施しているし、色彩理論についての著作もある。またバウハウスでの授業のためには詳細なノートを作成しており、それらが彼の実作と密接に関連していたことが明らかになっている。展覧会ではこうした資料も合わせて展示。クレーの作品を彼の理論と照らし合わせることで、前衛的な変革者としての顔を浮かび上がらせている。

「パウル・クレー:メイキング・ヴィジブル」
期間 2013年10月16日~2014年3月9日
開催場所 テート・モダン(ロンドン)
URL www.tate.org.uk/visit/tate-modern

鈴木布美子 (すずき ふみこ)
ジャーナリスト。80年代後半から映画批評、インタビューを数多く手掛ける。近年は主に現代アートや建築の分野で活動している。

Column

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2013.10.30(水)