「自分で自分を導いちゃうのってなんだかもったいない」

――お話を伺っていると、今後の目標等は決め込むことなく「赴くままに」という感じでしょうか。

 はい。目標は立てていません。「ここでこうして……」とは全く考えていません。若い頃は多少目標を立てているところはありましたが、いまは「次はどんな作品に出合えるかな? どんな人に会えるかな?」としか考えていないです。

 自分で決めすぎちゃうと、そっちに自分を行かせようとしすぎて運命に逆らえなくなっていく気がするんです。自分で自分を導いちゃうのってなんだかもったいないなって。それって一歩間違うと危険だし、「病は気から」じゃないですが「私は不幸」と思うとどんどんそんな顔になってそっちに引っ張られちゃうっていうじゃないですか。だから私は、「いま楽しい」をどれだけ経験するかでいいと思っています。

――どうしても「将来が不安」という方も多いので、前田さんの言葉が響きます。

 わかりますよ。先のことを考えると誰でも恐怖を感じてしまうものだと思います。「こうなったらいいな」とかポジティブなことを考えられたらいいけど、もし不安になったら、その瞬間に考えるのをやめちゃっていいんじゃないでしょうか。考えて落ち込んでしまうのももったいないし、引っ張られちゃうと今あるものすらフラットに見られなくなって「これもなくなったらどうしよう」と考えだしちゃってよくないと思います。

――仕事と同じくプライベートも「赴くままに」、でしょうか?

 プライベートでもあんまり計画は立てませんね。仕事はスケジュールが決まっているから、自分が一番自由にできるタイミングがプライベートの時間。だからそのときやりたいことをやろうと思って、突然お買い物に行ったり食べたいものを食べに行ったり、朝4時に起きてウーバーイーツ頼んだり……(笑)。

――ウーバーイーツ! (笑) その時間だと、営業中のお店は少ないのでは……。

 そうですね。どうしても人間があまり動いていない時間帯は少ないのですが、朝5時を過ぎると一気に増えます(笑)。深夜だと、カラフルな小籠包だったり1個1,000円くらいするおにぎりだったりがあって面白いです。そんな感じで、思い立ったらすぐ頼んだり、コンビニで好きなものを買ったりしてます。

 『もっと超越した所へ。』にも出演している趣里とすごく仲がいいのですが、ふたりとも次元が違うくらい食べるんです(笑)。目の前に食べ物をずっと置かれ続けたら、私たちはいつまでも食べているんじゃないかな。趣里が「おなかいっぱい」って言っているのを見たことがないです。泊まりに来たときも、寝るギリギリまでずっと2人で食べています。

――(笑)。仲良しですね。

 二人で会わない日も永遠にLINEをしてるから、もう電話した方が早いんじゃないの?っていうくらいで(笑)。占いによると、私と趣里はソウルメイトらしいんです。(趣里の両親の)水谷豊さんと伊藤蘭さんもソウルメイトだったそうで、私たちもそれを信じています。

――最後に……。『もっと超越した所へ。』の撮影現場にお邪魔した際、海外ドラマのお話をされていますが、いまオススメの作品はありますか?

 Netflixシリーズの『ピーキー・ブラインダーズ』がすごく好きなんです。キリアン・マーフィーがカッコよすぎて!

――キリアン・マーフィーといえばクリストファー・ノーラン監督作品の常連俳優ですし、CREA読者の方もご存じの方は多いかと思います。

 本当にカッコいいですよね。頭の両サイドを刈り上げているちょっと変わった髪型なのですが、すごく似合っていて。マフィア三兄弟の話で怖いところもありますが、キリアンがカッコいい!って観ていたら自然とハマっていると思います。

前田敦子(まえだ・あつこ)

1991年7月10日生まれ。2005年AKB48の1期生として活動を開始し、グループの中心メンバーとして活躍。07年映画『あしたの私のつくり方』で女優デビュー。11年『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』で映画初主演を務める。直近では、『パンドラの鐘』『夜の女たち』ほか舞台出演も精力的に行う。待機策に映画『そばかす』(2022年12月16日[金]公開予定)、『そして僕は途方に暮れる』(2023年1月13日[金]公開予定)ほか。

『もっと超越した所へ。』

舞台は、コロナ禍が忍び寄る2020年。ダメ男たちに四苦八苦する4人の女性の姿が描かれる。中学の同級生だった怜人(菊池風磨)が転がり込んでなし崩し的に同棲することになった衣装デザイナー・真知子(前田敦子)、ショップ店員の美和(伊藤万理華)と恋人でフリーターの泰造(オカモトレイジ)、父親の会社で働く富(千葉雄大)とルームシェアする元子役の鈴(趣里)、風俗嬢・七瀬(黒川芽以)と常連客・慎太郎(三浦貴大)。激変する社会と露わになる男たちの欠点、そして驚きの過去――。彼女たちが最後に選ぶ決断は?

2022年10月14日(金)より TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
配給:ハピネットファントム・スタジオ
コピーライト:©2022『もっと超越した所へ。』製作委員会
https://happinet-phantom.com/mottochouetsu/

2022.10.13(木)
文=SYO
撮影=深野未希
ヘアメイク=高橋里帆(HappyStar)
スタイリスト=有本祐輔(7回の裏)