台本の気になるところにはすべて折り目をつけていく

――永野さんはお話が来たときの心境を「めっちゃやりたいけどめっちゃやりたくない」と回想されていましたね。それくらいプレッシャーを感じていた、と。

 なんとなく、世間の皆さんが抱く私のイメージとシイノ役は全く違いますし、自分の中でも理解はしていました。そこに挑戦するからには「永野芽郁にはこんな姿もあるんだ」と絶対思わせたかったんです。かといって、自分の日常に近い役じゃないからうまくできないほうが確率的に高いんじゃないかと思ってしまって。自信はないけど、でも違う人がやっているのを観るのも悔しいし……という自分の中の葛藤がすごくありました。

 いままでは、「台本も面白いし、私にも近い気がする!」とスッと理解できる役が多かったんです。でも今回は、理解できる部分ももちろんあるけど、私が入っていることをイメージできない世界観だったので、「自分が入ることで壊さないか、大丈夫か」という戸惑いが一番大きかったです。

――永野さんは「日曜日の初耳学」に出演された際に「台本を読むのが好き」と話されていましたが、映画やドラマ等様々な台本に触れるなかで、どのようなポイントに注目しているのでしょうか。

 何の音も入ってこないくらい集中してグワーッと読むのですが、感覚的にはマンガ好きの方が好きな作品の新刊を読むときに近いかもしれません。

――没入する感じですね。

 はい、台本を一気に読んでいくなかで、気になるところには全部折り目を付けます。たとえば「物語的に急展開すぎない?」という引っかかりや、「このシーン、自分にできるかな」だったり「1回読むだけだとつながりが理解できないな」というところです。まずは折り目を付けつつ一気に読んで、後々その折り目を一つずつ解消していき、そこから「この作品に挑戦するか」を考えていきます。

――俯瞰で「さらで読む」をしてから、ご自身が「入る」体でもう一度読むというか。

 そうですね。1回目はただただ物語を視聴者の感覚で読んで、「いい話だ」とか「泣ける」といった、ただの感想を持つようにしています。

2022.09.30(金)
文=SYO
撮影=釜谷洋史