雅子さまもご体調を見ながら参列を検討されるとして、結果的に両陛下での国葬への参列が実現した。エリザベス女王の訃報から間もなく国葬が執り行われたことで、通常の公務などよりも急な日程で、ご体調を調整されたことと拝察している。

 

 そんな中で迎えたご出発の朝。皇居・正門からセンチュリーに乗車されて、両陛下が姿を見せられた。雅子さまは小さく会釈を繰り返されながら、左手を頬の高さまであげて、小刻みに振られていた。いつもよりも控えめな笑顔を浮かべられていたようだ。「全国戦没者追悼式」などでお召しになるスーツを選ばれた。周辺に集まった人は200人以上にのぼっただろうか。桜田門に向かって、両陛下を見送る人々が大勢並んでいた。

宿泊先のホテルを出発される天皇皇后両陛下 ©getty
宿泊先のホテルを出発される天皇皇后両陛下 ©getty

ブラックフォーマルの“雅子さまの貫禄”

 ロンドンへ到着された両陛下が黒いマスクを着用されていたことは話題を呼んだ。エリザベス女王に対する弔意と、コロナの感染対策への意識のあらわれだったのだろう。だが、ウェストミンスター寺院ではマスクを着用されることなく、素顔を見せられた。外出先で両陛下がマスクを外されているお姿を拝見したのは、実に久しぶりのことだった。モーニングをお召しになった陛下の穏やかなご表情や、雅子さまの静かでいて堂々としたお振る舞いに圧倒された。

エリザベス女王の国葬に参列された天皇皇后両陛下 ©WPA Pool/getty
エリザベス女王の国葬に参列された天皇皇后両陛下 ©WPA Pool/getty

 雅子さまはブラックのジャケットとスカートをお召しになり、帽子からパンプスまで、喪に服したフォーマルな装いだった。黒はジュエリーの輝きが映える色でもある。

 中でも印象的だったのは、雅子さまが身に着けられたブラックのイヤリングとネックレスだ。どちらも大ぶりなデザインで、雅子さまのシンプルなジャケット姿をその場にふさわしく、シックに演出していた。控えめながら、皇后陛下としての貫禄を見せられた。

 

両陛下がマスクを着用されなかった理由

 両陛下がマスクを着用されなかったのは、訪問国で定着している形式をふまえて、さらに他の参列者のことも考えられてのことだったのではないだろうか。以前から、雅子さまは、式典の性質や「お出ましになる場にふさわしいかどうか」という視点でお召し物を選ばれていると思うことがたびたびあった。そうしたお考えとも通底する姿勢を示されたように思う。

2022.09.29(木)
文=佐藤 あさ子