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コントでもドラマでも、人の頑張りがすべてを変える

――コント番組が実現しにくい理由のひとつとして、予算の問題があると思います。セットひとつ組むのに数千万円かかる、と。でも「東京03とスタア」も「イザミと東京03」も、すごく凝ったセットのように見えました。「スタア」のときは「この予算でどうやってこんなセットを!?」と橋本さんも驚いたそうですが。

 いろんな人から「今の時代に、どうやったの?」って聞かれました。僕もよくわかってないんですよ(笑)。そんなにお金があるわけじゃないのに、いろんな人がすごく頑張ってくれました。結局、コントでもドラマでも、人の頑張りがすべてを変えるということは身にしみてますね。時間も予算も少ない中でも、本当に自分の仕事にプライドを持って良いものをつくろうと思ってる技術さんは素晴らしいものをつくってくれる。そういう信頼があります。

 「イザミ」でも、僕の番組のセットを全部やってくれている日テレアートの熊崎という人間が一個一個考えてつくりこんでくれたんですよ。間接照明を少しずつ仕込んで奥行きを実際以上に見せる工夫があったり、飯塚さんの部屋のディテールがすごく凝っていたり。そういうセットがあるとやれることが増えるし、キャラもより生きてくる。それは演者さんの役作りも刺激するんです。

――観る側の没入感にも大きく影響しますよね。

 コントは総合芸術だと言われますが、本当にそうだなと感じました。演者さんがいて作家さんがいて、美術部がいて技術部がいて、全員がプロの仕事をしている中で、僕らがディレクションとして関わらせてもらう。めちゃくちゃ朝早くても撮影が大変でも、みんなの顔や動きから喜びがあふれていて、本当に多幸感がある現場でした。僕自身も、コントをやれる幸せを噛み締めましたね。

シソンヌじろうさんやかが屋、ハナコに会うと「同じ病気ですよね?」って勝手に嬉しくなる(笑)

――お話を聞いていて、橋本さん自身もコントをやらないと生きていけない人の一員なんだなと思いました。

 うーん、そうですね……つくっているものが自分の表現のすべてだと思っています。つくったものを人に理解してもらって喜んでもらって、笑ってもらえることがいちばん大事ですね。

 実は社会人になってからも3年くらい劇団をやっていたんですよ。大学時代に一緒にお笑いをやってた仲間と会場を借りて、朝まで仕事してから稽古場行って台本書いて公演して。それくらい、コントやお笑いをずっとやっていたいし、それが自分の生きている意味だと思ってます。ある意味、病なんでしょうね。なので、シソンヌじろうさんやかが屋、ハナコに会うと「同じ病気ですよね?」って勝手に嬉しくなる(笑)。

 コントって、それくらい素敵なものなんですよ。それが伝わるといいなといつも考えています。しかも今、そこに追い風が吹いていると思うんです。

――たしかに、一時期に比べて注目度が上がっているように感じます。

 エンターテインメントの享受の仕方が変わってきた結果、「エンタメを選ぶ」時代になっているんですよね。配信プラットフォームがあってネットの世界もあって、みんながそれぞれ強烈に「これが観たい」って意思を持って、観るものを選んでいる。

 テレビがその中のひとつになってしまうことはテレビマンからすると寂しくもあるけど、そこでコントというものがあらためて着目される可能性はありますよね。「私はコントが観たい」と思う人が日本に一定数いてくれることが可視化されたり、なんだったら世界で「ジャパニーズコント面白いね」って人も出てくるかもしれない。

 それって夢があるじゃないですか。“コントを守る会”にとってチャンスの今、1本でも多くつくっていきたいですね。5分の隙間枠でもなんでも、活かせるものは活かしたい。またそこから何かが起きるかもしれないですから。

橋本和明(はしもとかずあき)

日本テレビ所属の監督兼ディレクター。主な担当番組は「有吉の壁」「有吉ゼミ」「マツコ会議」「笑う心臓」など。

『イザミと東京03』

第4話放送日:10月1日(土)14:30~15:00
※関東ローカル 毎週土曜放送、全4回(放送後、Huluにて独占配信)
※最新話はHuluで1週間先行配信、ディレクターズカット完全版もHuluで独占配信
※第4話放送後にスピンオフ2話もHuluで配信

出演:
東京03(飯塚悟志 豊本明長 角田晃広)
佐倉綾音
高杉真宙 ※第2話ゲスト
水野美紀 ※第3話ゲスト
上田航平(ゾフィー) ※第3話刑事
岡田義徳 ※第4話ゲスト

企画・演出:佐久間宣行、橋本和明
第1話・第4話脚本・全体脚本監修:オークラ
第2話脚本:蓮見 翔(ダウ90000)
第3話脚本:上田 誠、左子光晴(ヨーロッパ企画)
プロデューサー:横澤 俊之
コンテンツ プロデューサー:鈴木 努、大東徹也
製作著作:日本テレビ
https://www.ntv.co.jp/tokyo03sutaa

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2022.10.01(土)
文=斎藤 岬