だからこそ彼は、自分を信じてついて来てくれているファンやスタッフからの“信頼”に、“感謝”を込めた歌や演技、パフォーマンスで必死に応えようとし続けているのだ。その相乗効果によって、言葉では言い表せない想像を越えた深い感動が生まれ、老若男女問わず多くの人が心を惹きつけられるに違いない。
若き日の福山の姿が記憶に残る『ホームワーク』
そんな福山の俳優としての出世作と言えるのが、大ヒットドラマ『ひとつ屋根の下』(1993年)であるが、私はあえてその前年に出演した『ホームワーク』(1992年)を挙げたい。
当時23歳だった福山は本作で、元彼・圭介(唐沢寿明)への想いを断ち切れない恋人・うらん(浦江アキコ)に複雑な思いを抱えたナイーブな青年・周二役を好演。最終回では、雪の降るクリスマスの中、周二とうらんが、圭介と一緒に歩く周二の元カノ・幸子(清水美沙)と街で偶然遭遇する。
圭介、うらん、幸子の3人は、いろいろなことがあったものの言葉を飲み込み、「メリークリスマス」とだけ声をかけるが、周二だけはその言葉を口にせず、二組のカップルがそれぞれの道を歩いていくラストシーンが印象的だった。なお、このドラマで共演した唐沢とは15年後、『ガリレオ』第1シーズン第1話で再び共演を果たしている。
福山はその後、シンガーソングライターとして大きく飛躍していくと同時に、俳優としても着実にキャリアを積み重ねていく。『ホームワーク』は、そんな彼の未来を予感させる演技を垣間見ることが出来る作品と言える。
フジテレビ“月9”枠の『いつかまた逢える』(1995年)、『パーフェクトラブ!』(1999年)、『ラヴソング』(2016年)、NHK大河ドラマ『龍馬伝』(2010年)、そしてTBS日曜劇場『集団左遷!!』(2019年)と、各テレビ局の看板とも言えるドラマ枠で主演を務めてきた福山だが、続編が作られた主演作は『ガリレオ』のみとなっている。
2022.09.25(日)
文=中村裕一