舞台を観た人に、この俳優面白いって思わせたら勝ち

――確かに、ファンとしてもそういうイメージをどうしても期待してしまう部分もありますしね。玉田さんの作品でいうと、会話劇の魅力と重なる部分でもありますが、舞台上で俳優が自然な姿で演じているように感じます。その大きな要因として俳優を決めてから脚本を書く「当て書き」があるかなと思うのですが、今回も脚本は当て書きで書かれたんですか。

 そうですね、というか当て書きじゃないと書けないんです(笑)。

 なので、まずは俳優を決めよう、となるんですけど、オーディションは昨年の10月『夏の砂の上』と一緒にしたんですよ。その時点では韓国エンタメが好きな脚本家が主人公、というレベルぐらいでしか決まってなくて。まだストーリーは無く、本当に基本的な設定だけ。オーディションではとにかく面白そうな人を8人~10人選ぶというだけ。男女のバランスぐらいですね、他に考えることは。

――その俳優さんたちを見て、物語を構築していくんですか?

 そうです。だから毎回物語の内容はメチャクチャ変わってきます。役の名前も最初は決まっていなくて、役者さんの名前で脚本メモも作っていきますから。

 以前は、漠然と物語性が強いものを作りたい、と思っていたこともあったんですけど。なかなかうまくいかなくて。実際に役者さんたちを見て、そこから生まれてくるミクロな人間関係とか瞬間瞬間の面白さを描いているうちに自然と物語が構築されて、それが面白いというのが理想じゃないかと思うようになりました。

――「영(ヨン)」で見て欲しいところを教えてください。

 誰しもが自分のやりたいことと周りが自分に求めることが大きく違うという悩みは、仕事や生活の中で感じることだと思うので、そういった意味では普遍的な物語になってくれていると感じています。

 後は、やっぱり俳優の面白さですね。当て書きしていることもあるし、この俳優面白いって思ってくれたらそれは勝ちだなと。今回は、韓国の俳優も呼んだりして、韓国の俳優と日本の俳優の絡みにも挑戦しているので、そこでも関係性の面白さや俳優の面白さを引き出せるかというのが自分でも楽しみなところです。
 

玉田企画
『영(ヨン)』

日時 2022年9月23日(金)~10月2日(日)
会場 東京芸術劇場 シアターイースト
所在地 東京都豊島区西池袋1-8-1
時間の詳細はHPをご確認ください
料金 前売一般 4,000円(初日割3,500円)、学生 2,500円、高校生以下 1,000円

2022.09.20(火)
文=CREA編集部
写真=山元茂樹