そういう経験があり、動画に撮ってもらったらという気持ちがふっと湧いたのです。最初は、私の身内しか見ていなかったのですが、それで十分でした。でも、7本目に「お部屋紹介」の動画をアップしたら、ヒュッヒュッとチャンネル登録者数が急に増えていったのです。

――俗に言う“バズった”というやつですね。

多良 そう、バズったんです。孫から「バズった」と聞いたときは何のことかわかりませんでしたけど(笑)。ただ自分の部屋の様子をアップしただけなのに、びっくりするような再生数を記録して、「どうして、どうして」って。ポカンとしてしまいましたよ。

視聴者の多くは、中高年の女性

――動画では、多良さんの手料理や趣味といったささやかな日常をアップされています。ところが、今ではチャンネル登録者数は12万人を突破。その多くが、50代以上の女性だとお聞きしました。

多良 時々若い方も見てくださるようですが、私ぐらいの年代の親を持つ、中高年の方が多いみたいです。

 

――動画を拝見すると、多良さんの日常からは、老いたとしても、一人だとしても、自分の中で満足感をもって日々を重ねていくことができる――そんな力強さを感じます。老いた親を持つ子ども世代としても学びがある。『Earthおばあちゃんねる』に励まされる人も多いと思います。

多良 そういったコメントを多くいただいています。ありがたいですよね。亡くなった主人は、普通のサラリーマンでしたから、子育てをしながらでは贅沢はできません。節約しながら、できる範囲で、今までずっと工夫してきたものを、少しずつ年寄り向きに簡単にしてきただけ。

 そんな何気なくやっていることに好意的なコメントを寄せていただけると、「えっ、そうなんだ」と反対に気づかされます。普通の生活でいいんだ――と、視聴者の方に教えてもらった感じです。このままで何も変えなくていいんだと思って、今は毎日楽しんでおります(笑)。

2022.09.18(日)
文=我妻 弘崇