あの全力の年月がなければ倒れることもなかったけど、いまの私もないと思うんです。あのころ演じたキャラクターを今でも演じる機会があったり、キャラクターを好きでいてくれた人たちが、今も私のお芝居を聞きたいと待っていてくれたりする。あの頃出会った大勢のキャラクターが、今も私を前に進めてくれているような感覚があるんです。

 きっと大事なのは、自分の気持ちと体、どっちも思いやるバランスなんですよね。……どの口が言うか、って話ですけど(笑)。

 いま、どこも痛くなくて、苦しくもなくて、好きなお芝居がやれてて、「私って本当にラッキーだな」って思います。

撮影=橋本篤/文藝春秋

2022.09.02(金)
文=加山 竜司