強めの治療は副作用が大きく、日常生活が遠のいてしまうんです。それでも覚悟を決めて半年間その治療を受けたんですけど、1年が経とうという時期に、また数値が悪くなってきて……。
主治医の先生が「ちょっとマズいので、もう一度やりましょう」と。でも、一度目の副作用も収まってなかったので渋ったら、「これをやらないと2週間後の命を保証できないんですよ」と告げられたんです。
――人生で二度目の余命宣告ですね。
後藤 大人になると、面と向かって言われるんですね。でも、2週間って短すぎて、逆に腹が括れました。助けてくれるM先生はもういないし、セカンドオピニオンを敬遠する主治医を説得するのは難しい。そしてその治療を「明日にも始めます」と言うので……。
――……言うので?
後藤 脱走を……(笑)。体につけられていた管をすべて自分で外して、病室を抜け出したんです。近所の診療所に駆け込んで「これこれこういう病気です」「セカンドオピニオンを求めているので、どこか専門の科のある病院を紹介して下さい」と。その後、何食わぬ顔でシレッと病院に戻ったら、エントランスで捕獲されました。大騒ぎになっていたようです(笑)。
結果、転院できたのは何よりでした。新しい病院の初診で、つい私は、「すぐ死にますか?」と聞いてしまったんです。それは、私がいちばん聞きたかったことでした。
でも、新しい主治医からは「死にません」と断言されて、もう驚くやら、泣けるやらで……。医師の言葉は良いものも悪いものも“強い”ですね。ほんと、「2週間」とか「夏いっぱい」とか、やめてほしい。一部の医者には盛り癖があるようにすら思えます。
その後、治療も奏功し、無事退院することができました。
2017年にはステージで再び「ハレ晴レユカイ」を…「『ただいま』って言えた気がしました」
――緊急入院したのが2012年でした。入院期間は2年におよびましたが、現在の体調はいかがですか?
2022.09.02(金)
文=加山 竜司