高さ333メートルの東京タワーを覆い尽くす花火が、東京湾大華火祭で上がる1.5尺玉です。「タワーと花火が同じ高さに見える」ように撮りたいと思って、あれやこれやと調べてみたところ、タワーから2.5キロ離れた場所であれば撮影できることがわかりました。
発案から7年目にしてようやく撮れたと思ったら、翌年には撮影場所として使わせていただいたビルと東京タワーの間に大きなビルが建って、もう同じ写真を撮れなくなってしまいました。花火との出会いは一期一会、「こんなふうに見ることもできた時代があったんだよ」ということを知ってもらいたい1枚です。
花火に飽きることは絶対にない
――最後に、金武さんが考える「花火の魅力」を教えてください。
金武 夜空に開く花火を感じると、脳内物質が出るんですよね……。すごく気持ちいいし、自分は本当にちっぽけな人間なんだ、ちっぽけなことで悩んでいるなと思ったりします。でも、その花火は人間が作っているわけですから「人間ってすごい!」とも思ったり。
花火を間近で見た際に感じる高揚感、火薬のにおい、音圧……。それは絶対にカメラのファインダーには収まらないものなので、ぜひ体で感じてほしいなと思います。僕がどれだけいい写真を撮ったとしても、やはり花火の表面の魅力しか表現できていない。写真を見て、少しでも魅力を感じたなら、実際に花火が見られる場所に足を運んでくれたら嬉しいです。
2022.08.26(金)
文=吉河未布