――花火の世界にも、技術進歩があるわけですか?

金武 花火は永久不変でなく、常に進化しています。たとえば、昔は表現できなかった「パステルカラー」の花火も人気です。スカイブルーやレモンイエローなど、そういった中間色が表現できるようになりました。

 その中でも特に美しいのは、山梨県にある齊木煙火本店のもの。県内最大規模の花火大会「神明の花火」(2022年は8月7日に開催された)では、2尺玉や色鮮やかな花火を大量に消費する「ワイドスターマイン」は圧巻です。こちらもぜひその目で確かめてみてほしい。

 

――逆に、写真だからこそ美しさが際立つ花火もあるのでは?

金武 写真だからこそ映えるのは「光跡(こうせき)」ですね。肉眼で追うのは難しいですが、写真ならその光の筋を残すことができる。たとえば「牡丹花火」の場合、ポンッと開くとき中心から光の粒が広がっていきますが、その光跡は写真でしか表わせません。

 この写真は新潟県小千谷市片貝の「片貝まつり」(2022年9月9〜10日開催予定)で打ち上げる世界最大級の四尺玉です。

 一般的な花火の中で一番大きな尺玉と四尺玉を共に……そんな思いから、何度も何度も撮影に挑戦しました。撮影に成功するまで、30年かかりましたね。

金武武が選んだ「最高の花火」3選

――花火を誰よりも追いかけてきた金武さんが、印象深かったものを教えてくれますか?

金武 まずは先程も話に出た450年以上の伝統を持つ豊橋の「手筒花火」です。揚げ手が80cmもある筒を直に持って、まるで大砲のように火を噴出する姿は勇ましくて、セクシーでもあります。さらに自分で上げる花火は自分で作るのがルール。そこもまたドラマティックです。

 2つ目は、全国新作花火競技大会で賞も受賞した齊木煙火本店さんの「虹色のグラデーション」。一本の筋が何度も色を変えていくのが、本当に美しい。

 残念ながら、3つ目はもう二度と撮ることのできない東京湾大華火祭の「東京タワーと花火」のショットです。

2022.08.26(金)
文=吉河未布