「こんなの写真じゃねえよ」目の前で作品をビリビリに破られたことも…それでもカメラを手放さなかった「59歳・花火写真家」の執念 から続く

 毎年、多くの日本人を魅了する「花火」。人々の心を打ち、時には感動させて人生にまで影響を与えることも。17歳のときに初めて見た花火をきっかけに、花火写真家として生きることになった金武武(かねたけ・たけし)さんインタビュー。

 これまで何千、何万発もの花火を見てきた金武さんが選んだ「人生で最も印象深かった花火」とは?(全2回の2回目/前編を読む)

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下見、試し撮り、本番…撮影は「3年目」が本番

――瞬間の芸術ともいえる花火を撮影するのは、難しくないですか?

金武武さん(以下、金武) 僕はね、花火の写真を撮る時、「1回で成功するもの」とは思っていません。1年目は下見、2年目は試し撮り、3年目でようやく本番なんです。

――3年越しですか!

金武 本気で花火の美しさを写すには、下準備が大事なんです。一時期はあえてカメラのファインダーを覗かず、ただただ自分の目で花火を追いかけていたこともありました。

 そうやって俯瞰して見ていくうちに段々と、打ち上がる場所や、花火大会の構成などがわかってきた。そこで、下調べの重要さを学んだわけです。

――打ち上がる花火も、その背景を知っているとより楽しめそうです。

金武 その通り。たとえば打ち上げ花火にも様々な種類があって、それぞれに名前があります。たとえば「冠菊(かむろぎく)」は、キラキラと光りながら垂れてゆく花火です。

 ヒューッと音を出しながら空に上がり、大きく弾けたあとに、小さな菊の花のような花火がたくさん開くのが「千輪菊(せんりんぎく)」。実はこのヒューッという音は、花火師さんがわざわざつけているわけです。

 それとコロナ前には、「時間差花火」がすごく流行りましたね。花火の燃焼時間や温度を変えることで、まるで意志を持っているかのように色が複雑に変化する花火です。花火が光のリングのように回転している様子は、ぜひ生で見てほしいですね。

2022.08.26(金)
文=吉河未布