©文藝春秋
©文藝春秋

生き続けなきゃ、もったいない

――最後に、自分の子どもが不登校やひきこもりだったら、つまり、御しがたいダイバダッタのように見えたら、親としてどう向き合えばいいのかについて教えてください。(不登校新聞編集長・石井)

 うん……。私なら、自分は助かって、子どもだけをどっかに落とそうって考えるんじゃなくて、この子が食っていけなくなったら、自分も路上でやっていくぐらいの覚悟をするなあ。

 この子の苦しみに寄り添うしかないのよね。だから、ああしろ、こうしろとは、もちろん言わない。言って直るようならとっくに直ってるでしょう?

 うちの夫が「不良になるのも勇気がいるんだ」と言ったことがある。道を外すのも覚悟がいるのよ。ただ、それがだんだんと習慣になっちゃうとねえ。一緒に住んでる人はほんとに大変だと思うけど、やっぱり、自分が成熟するための存在なんだと受け取り方を変えるのがいいと思いますね。

――なるほど。

 お釈迦さんがね、「人間として生まれることはきわめて稀なことだ」と言ってるの。だったらね、生き続けなきゃ、もったいないじゃない。

2022.08.23(火)
文=樹木希林、内田也哉子