世界的なヒットとなった『イカゲーム』に迫るか。そんな声も聞かれる韓国ドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』。自閉スペクトラム症を持つ新米弁護士が、弁護士として、人として成長していく過程を描いたこのドラマは、Netflixの非英語圏ドラマで1位(7月25日~31日)を記録。米国の制作会社からは早くもリメイクのオファーが舞い込んでいる。
韓国でもケーブルテレビでの放送にもかかわらず、視聴率は6月末の1話0.9%からぐんぐん上がり、これまでの最高視聴率は15.8%に。その人気はもはや社会現象だ。毎日必ずどこかの媒体でドラマが取り上げられ、切り取られる視点はエンターテインメント、専門医や自閉スペクトラム症を持つ当事者や保護者の立場からと多方面に渡っており、ウ・ヨンウの話題に触れない日はない。
ヒットする要素の“ないないずくめ”
しかし、これほどのヒットを予想した人はいなかったと韓国紙のエンタメ記者は言う。
「メジャーでないケーブルテレビでの放送で、しかも脚本家初のドラマ作品、そして俳優も引き受けるのに躊躇したという難しい役どころの、自閉スペクトラム症を持つ主人公という設定。ヒットする要素の“ないないずくめ”で、業界でも誰もこんなに大ヒットするとは予想もしていませんでした」
エンターテインメント界にはあらためて「作品ありき」「コンテンツありき」を知らしめたが、脚本家は「ウ・ヨンウへこんなにも多くの方が感情移入してくれるのは奇跡のように思う」と話している。どうしてそんな奇跡が起きたのか。
ウ・ヨンウは、自閉スペクトラム症を持つ新米弁護士だ。IQは164。5歳の時にある出来事をきっかけに刑法を諳んじて言葉を初めて発した。そんなウ・ヨンウが韓国最高峰ソウル大学ロースクールを首席で卒業し、大手法律事務所に入社したところから物語は始まる。
愛して止まない法律と鯨には驚異的な知識を誇るが、人とのコミュニケーションは苦手だ。食事も材料がひと目で分かるキンパプと決まっていて、初めての出勤の日には会社の回転ドアを通り抜けられない。自閉スペクトラム症は、自閉症や人と感情を共有することが苦手なアスペルガー症候群などのスペクトラムを指す。
2022.08.14(日)
文=菅野 朋子