古くから地球上に存在するバラ
バラは5000万年以上前から存在していたとされ、野生種は北半球のみに分布し、150種ほどあるといわれています。自生地や系統別に配植している「野生種・オールドローズ園」では、園内を巡りながら人とバラの歴史と系統をたどることができます。
「現在では2万以上の品種があるともわれているバラですが、華やかな園芸品種のほかに、古くから自然界に存在し、品種改良の元になった種があります。それらの品種は、花が小ぶりだったり、一重だったり、葉の形が面白かったりして、現代のバラとは違った魅力があるので、少しのぞいてみましょう」
ノイバラやハマナスなど、日本各地にも自生しているバラが数種あります。『万葉集』に「宇万良(うまら)」という名でバラが登場していることからも、古くから日本人に親しまれているポピュラーな花のひとつだったようです。
ひとつひとつの花が小ぶりで、ひとつの枝先に少しだけ花をつけているモリイバラも日本原産のバラ。盆栽で愛でるような清楚で可憐な印象があります。
続いては、芳香があり、枝に多くの淡い紅色の花をつけているサンショウバラです。同じく日本原産のバラで、花は咲いた翌日に散ってしまうという儚さがありますが、太い幹や荒々しいトゲが野生的です。
「サンショウバラの名前の由来は、葉っぱが山椒によく似ていることからきているんですよ」
日本原産のバラをもうひとつ発見しました。ノイバラとハマナスの自然交雑種、ロサ・イワラです。
「硬いトゲがまさにイバラですね。一重咲きで花びらが5枚ということから、桜の花のようにも見えませんか? じつは桜もバラ科なんですよ」
「こちらは、椿と似ていますね。ナニワイバラは中国原産ですが、日本の暖地で野生化していることも。かすかな香りです」
一方、春の草花のようなフレッシュな香りを漂わせている正体は、モッコウバラ。中国原産の野生バラで、全体にトゲはなく、育つと6メートルほどになるそう。花つきがよく、枝の先に3センチほどの小花が10輪ほど見えます。黄花のものが、キモッコウバラと呼ばれます。
「いかがでしたか? 木そのものが立派だったり、花びらの枚数が圧倒的に少ない一重のバラ、桜や椿っぽいものがあったり。普段あまり目に留めないような原種系のバラもそれぞれ趣があって、バラの違った楽しみ方ができたのではないでしょうか」
次は、もう少しアウトドア気分を盛り上げて、野草のコーナーも見てみましょう。
2022.08.14(日)
文=大嶋律子(Giraffe)
撮影=榎本麻美