2022年4~7月にCREA WEBで反響の大きかった記事ベスト7を発表します。ビューティー・ライフスタイル部門の第4位は、こちら! (初公開日 2022年5月28日)。

» 他のベスト記事も読む


 昨年秋に公開し、好評だった「野草さんぽ」の第2弾! 今回は、2021年に開園60周年を迎えた、調布市にある神代植物公園へ、初夏に楽しみたい草花を探しに行きました。

 神代植物公園には約4,800種類、10万本・株の樹木が植えられています。園内は、ばら園やつつじ園をはじめ、植物の種類ごとに30ブロックに分けられており、景色を眺めながら植物の知識を得ることができます。

 ナビゲーターは、CREA WEBで「今日、花を飾るなら。ブルームカレンダー」を連載している、フラワーデザイナーの佐藤俊輔さん。園内を散策しながら、今が盛りのバラと可憐な花を咲かせる野草を中心にお話を伺いました。


“香りの女王”バラの楽しみ方

  皆が大好きなバラの季節がやってきました!  神代植物公園では3年ぶりの「春のバラフェスタ」が5 月29日まで開催中されています。1番花が終わっても、次々に2番、3番花が咲くので、例年7月頃まで楽しめるのだとか。

 古くは紀元前にまで遡るといわれるバラの歴史。遥か昔から美しい咲き姿と優雅な香りで人々を魅了してきました。「神代植物公園」には、1961年の開園当初から「ばら園」があり、約400種類5,200株のバラが植栽されています。

「こんなにたくさんのバラがあると迷ってしまいますよね。そんな時は、テーマを決めて回ってみるのもおすすめです。例えば香り。『神代植物公園』では、香りの強いバラの名札に印をつけているので、わかりやすく見ることができます。印を見つけたら、ぜひマスクを外して顔を近づけて楽しみましょう」

 香りの系統をたどりながら「ばら園」をガイドしてくれた佐藤さん。バラの香りは晴天日の早朝から午前中に最も強くなるため、香りを楽しむなら午前中が狙い目なのだそう。香りが特徴的なバラを実際にめぐってみました。

 印のついた名札を探していると、連載でご紹介している「エレガント・レディ」。

「エレガントで女性らしい雰囲気を放っていますね。香りの印はありませんが、わずかにティー系の香りがしますよ」

 バラはジャスミン、スズランと並んで「三大花香」とされ、「香りの女王」ともいわれています。その香りを大きく分けると7つに分類されるそう。

「ダマスク・クラシック系、ダマスク・モダン系といったダマスク系は、強い甘さと華やかさが感じられるバラを代表とする香りです。それから、紅茶のような優雅な香りで親しみやすいティー系の香り、ハーブのアニスに似てアニスの甘さを抑えて青臭さを強めたようなアニス(ミルラ)系の香り、スパイシー系、フルーティー系、ブルー系など7つのタイプに分類され、それぞれが混ざり合うことでバラの魅力ある香りが生まれます」

 高貴な香りから「バラの女王」と呼ばれ、多くの人々に愛されるダマスク・ローズ。その香りの高さと精油成分を多く含んでいることから、香水の成分として使用されるローズオイルを抽出するための原料としても有名です。ダマスク・ローズを見つけたところ、つぼみしかない様子でしたが、バラはつぼみを愛でるのもおすすめだと佐藤さん。

 鮮やかな黄色い花を咲かせるバラの前で足を止めた佐藤さん。ちょっと面白いバラのようです。

「フリージアです。その名の通り、フリージアの香りがするんですよ。柑橘系のトロピカルな甘い感じが似ています。香りの系統だと、モモやリンゴなどの果物に例えられる、爽やかな印象の香りのフルーティー系になります」

 続いてブルー系の香りを探してみると、ブルー・ムーンがなんともいえないいい色で咲き、待ち構えているようでした。

「青バラ系品種には、特有の甘さが感じられます。ダマスク・モダンとティーの香り成分が混在しているブルー系の香りですね。今度はスパイシー系のバラを探してみましょう」

「ありました! 見た目がアネモネっぽいですよね。花びらのふちが波打っているのがデンディ・ベスです。クローブの香りを含む、甘さが感じられるスパイシー系の香りがします」

 香りの系統をたどりながら歩いていると、アロマ効果が高いからなのか、日常のちょっとしたストレスを忘れるかのようにリフレッシュ気分を味わえます。バラの香りは多種多様なので、きっと自分好みの香りに出合えることでしょう。

 バラの香りに満たされる「ばら園本園」を楽しんだあとは、普段あまり目に留めない、野生種・オールドローズのコーナーを散策してみることに。「野生種・オールドローズ園」へ移動する途中には、つるバラが花を咲かせていました。

「これはカクテルですね。比較的育てやすいので、実はうちのベランダでも花を咲かせています。強い香りが苦手な方でも楽しむことができる、ほのかないい香り。また、咲きはじめは赤くて、中心が黄色から白色に徐々に変化していくので、色のグラデーションを楽しむのも面白いかもしれません」

 次は、野生種をテーマにバラを見てみましょう。

2022.08.14(日)
文=大嶋律子(Giraffe)
撮影=榎本麻美