台湾中部の谷關温泉にある「星のやグーグァン」。2019年のオープンから3年が経ちますが、その評判は今も変わらず。「半年前から予約が埋まる」と言われるほどの人気を誇っています。
昨秋からは、季節に合わせた特別プランも開始。今回は、春と夏の「沐暑リゾート滞在」というプランを体験し、その人気の秘密を探っていきたいと思います。
日本と台湾を自由に往来できるまでにはあと少しかかりそうですが、次の旅の参考にしてみてはいかがでしょう。
緑豊かな秘境で体験する、源泉かけ流しの湯
台湾高速鉄路(台灣高鐵)の台中駅から車で約1時間30分。車窓から深い緑に覆われた山々を眺めていると、「谷關温泉」へ到着します。車を降りると、谷間から吹く心地よい風が全身を包み込みます。
広報担当の徐瑋歆さんによれば、「ここは台北よりも気温が5度程度低く、夏でも快適に過ごせます」とのこと。こうした地の利を生かして生まれたのが「沐暑リゾート滞在プラン」。2泊3日で滞在する宿泊者を対象としたプランで、参加できるのは1日1組のみ。文字通りのスペシャルプランです。
チェックインは中庭の「ウォーターガーデン」にある「ガゼボ(あずまや)」で。水滴のような形をした寒天ゼリー(水滴餅)と水出しの梨山産烏龍茶をいただき、まずはホッと一息つきましょう。
客室に案内されると、目に飛び込んでくるのは壁一面の大きな窓。窓の外に広がる山々に圧倒されます。部屋は広く、室内に「月見台」と呼ばれる小上がりもあります。ふかふかのマットも用意されており、寝っ転がりながら美しい景色が楽しめます。
山の天気は変わりやすく、燦々と陽光が降り注いでいたかと思うと、急に白い霧に包まれたりします。その様子はまるで巨大なスクリーンに流れる映像のように美しく、次々に表情を変える自然の美に魅せられます。
客室はメゾネットタイプで、リビング・寝室フロアと浴室に分かれています。浴室には山の澄んだ空気が流れ込み、鳥や虫の鳴き声が聞こえてきます。これだけでも日常の煩わしさを忘れられます。
そして、コンコンとあふれ出てくる無色透明の湯。泉質は弱アルカリ性炭酸水素塩泉。肌への刺激が少なく、しっとりと染み込んでいきます。「これぞ名湯!」と誰もが思う湯の良さです。
「星のやグーグァン」の目玉は、部屋風呂も大浴場も源泉かけ流しであること。徐さんによれば、星野リゾート代表の星野佳路氏がこの地にホテルを開くことを決めたポイントは、 「全室源泉かけ流し風呂を実現できる湯量の豊富さ」だったと言います。確かに圧倒されてしまうほどの湯量を誇っています。
大浴場には広々とした屋内風呂のほか、庭園のように大きい露天風呂もあります。こちらは渓流をイメージした造りで、奥には小さな滝まであります。夜には満天の星も眺められます。
なお、「沐暑リゾート滞在プラン」では、午後に「大浴場の貸し切り」という贅沢なサービスもあります。これは星野リゾート全体でも新たな試みとなっているそうで、新婚旅行や結婚記念日で訪れるゲストに大好評とのこと。広々とした大浴場を独占できるなんて、一生のうち、何度あるかわからないほどの贅沢さです。
2022.08.02(火)
文=片倉真理
撮影=片倉佳史/星のや グーグァン(料理長写真)