余白や沈黙には敵わないから「自分に近いところ」で言葉を話したい
――木竜さんの言葉の端々から豊かな感性を感じますが、その“泉”はどのように満たしているのでしょう?
例えば詩集やその作家さんが好きな詩人、エッセイを読むことは自分の中で大切ですし、映画や演劇など、そこで実際に足を運んで自分が体験することはすごくワクワクします。あとはこういったようにインタビューで自分の言葉で話させていただく機会。整理もできますし、普段とはまたちょっと違う緊張感があって、脚本や文章を書く人の言語化能力のすごさを感じます。
自分は、言葉にした瞬間に本当に思っていたことからはちょっと離れている感覚があって、そこに人の目が入って結果的にすごく遠くに行くものであると感じています。映画を観ていても思うのですが、余白や沈黙にはどうしてもかなわない。だけどそういう中でも伝えたいと思うとき、それは言葉にしたいとき・しなきゃいけないときでもあります。だからこそ、なるべく自分に近いところで言葉を話せたらいいというのは普段感じていることですね。
――余白は想像力を高めてもくれますよね。本作もそうかと思いますが、木竜さんご自身も余白のある作品がお好きなのでしょうか。
そうですね。映画にしても色々なものを観ますし、まだまだ知らない作品もたくさんありますが、余白のある映画は好きです。例えば片方が大事な話をしているときに聞いている人の顔だけが映されていたら、観ているこちらは話している人の顔を想像したり、言われた側の中で何が起きているかを想像しますよね。それは非常に豊かだと思いますし、スピリチュアルな話ではないですが(笑)、宇宙の広がりを感じます。
最近だと、リバー・フェニックスさん主演の『恋のドッグファイト』(1991)を観ました。男の子だけ観たらちょっと嫌な人物でも、話をしている女の子がどんな表情をするかでこちらの印象が変わるんです。その瞬間を観たときは「すごい!」と感じました。(【はじめから読む】木竜麻生が『わたし達はおとな』でみせた“無意識の仕草”)
木竜麻生(きりゅう・まい)
1994年7月1日生まれ。新潟県出身。2014年に映画『まほろ駅前狂騒曲』で女優デビュー。その後、映画『菊とギロチン』、『鈴木家の嘘』に出演し、第31回東京国際映画祭東京ジェムストーン賞など数々の賞を受賞。
『わたし達はおとな』
2022年6月10日(金)より新宿武蔵野館ほか全国公開
出演:木竜麻生 藤原季節 菅野莉央 清水くるみ 森田想 / 桜田通 山崎紘菜 片岡礼子 石田ひかり 佐戸井けん太
監督・脚本:加藤拓也
音楽:谷川正憲
製作:狩野隆也 松岡雄浩 宇田川寧
エグゼクティブプロデューサー:服部保彦
プロデューサー:松岡達矢 柴原祐一
配給:ラビットハウス
(not) HEROINE movies第一回作品 メ~テレ60周年
©2022「わたし達はおとな」製作委員会
公式HP:https://notheroinemovies.com/
2022.06.06(月)
文=SYO
撮影=今井知佑
ヘアメイク=主代美樹
スタイリスト=神田百実