南極の氷山と米ユタ州の峡谷は似たもの同士?

上:南極のうねる波のような氷山。寝転んでいるのはカニクイアザラシ
(C) PAUL NICKLEN / National Geographic Creative
下:米国ユタ州のバーミリオン・クリフにある「ザ・ウェーブ」と呼ばれる峡谷。日光による褪色や鉱物の堆積が各層の砂の色を変え、長年の侵食が砂岩を削り地層を露出させた
(C) YVA MOMATIUK & JOHN EASTCOTT / MINDEN PICTURES / National Geographic Creative

 例えば、タンザニアにあるナトロン湖の雨季と乾季それぞれの風景。この2枚の写真が同じ場所を撮ったものだとは、にわかには信じることができないだろう。

 エクアドルのコトパクシ火山とインドネシアのシナブン火山は、どちらも富士山そっくり。日本人ですら、わが国の誇るかの霊峰と見紛いかねない。

 南極の氷山と米国ユタ州の峡谷が、偶然、同じような縞模様を描き出しているのも面白い。色の異なるビッグウェーブのようだ。見ているだけで、まるでサーフィンでもしているかのごとき気分になる。

 アートディレクションを手がけたのは、鬼才・祖父江慎氏。写真を楽しみつくすことを考え抜いた末に仕上がった、秀逸なデザインにうなってしまう。なかでも、このシリーズに共通する、ページを180度平らに開いたまま置くことができる造本は素晴らしい。写真集というフォーマット自体を次のフェイズへと進化させた感がある。

 悠久の時の流れの中で育まれ、織り成された奇観は、自然界が作り上げた奇跡の産物。想像を絶するランドスケープが、非日常の世界へと誘ってくれる。

 アクセスが難しい秘境ばかりだからこそ、ここに収められた写真は、余計に旅情を喚起させてやまない。いつか本当に訪れる日を夢みながら、イマジネーションの翼をはばたかせるのも楽しいだろう。

 ひとたび手に入れたなら、長い付き合いになりそうな一冊である。

『絶景×絶景』
ナショナル ジオグラフィック 編著
発行 日経ナショナル ジオグラフィック社
発売 日経BPマーケティング
定価 ¥1680
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2013.09.28(土)