そして沖縄をテーマにした朝ドラとして誰もが思い返すのが沖縄返還30周年を前に作られた『ちゅらさん』だろう。2015年に亡くなった平良とみが演じるおばぁと、劇中のウチナーグチ「なんくるないさ」は本土の視聴者に愛された。だがそれは2013年の琉球新報のコラムによれば本来「まくとぅーそーけー(正しいことを、誠の事をしていれば)、なんくるないさ(なんとかなるさ)」という定型句の後半だけを切り出したものだという。

 NHKの戦争証言アーカイブスでは、平良とみが子どもの時に経験した沖縄戦、そこで見た捕虜の米兵の放心状態の顔を語る映像を今も見ることができる。平良とみはおそらく、沖縄戦の惨禍だけではなく、その後の復帰前後の本土からの苛烈な差別もよく知った上で、朝ドラ視聴者の求める沖縄のおばぁを演じていたのではないかと思う。

 

 沖縄県は今、経済的に打ちのめされている。コロナ禍による旅行の制限は、県経済の根幹である観光産業を年単位で容赦なく直撃し続けた。

 誰もが笑顔になる、沖縄に親しみを持ってくれる、日曜日に横浜鶴見まで足を伸ばし、新型コロナ感染症が落ち着いたら沖縄に行きたくなる、『ちゅらさん』のように愛される朝ドラをまた作ってほしい。そうした朝ドラ人気への期待が一方では確実に存在する。そしてもう一方では、『ちゅらさん』が描けなかったもの、なんくるないさ、の忘れられたもう半分まで届くような作品を2022年の今だから残してほしい、そうした内容への期待も一方にある。

時代と、舞台設定に感じる「意志」

 今の時点で『ちむどんどん』が高い評価を獲得しているとは言いがたい。視聴率は良いとは言えず、SNSでも批判が目立つ。沖縄で徴兵され中国へ送られた父親や、戦時中、陸軍の幹部候補生として沖縄の部隊に配属されていた民俗学者の青柳といった、脚本上、明らかに何か重要な意味を含んで登場したはずの人物たちが、物語上では明白なメッセージを発しないまま、コミカルな演出の中で沖縄編は終わった。これまでの朝ドラでも何度も見た、右手で打ち出したはずのテーマを左手が迂回するような歯痒い光景だ。

2022.05.26(木)
文=CDB