たまに勝生さんと一緒にご飯に行っても妙な緊張感が高まってしまい、逆にうまく話せない。スタジオでみんなでいる時は平気なのに。ね? 初々しいでしょ?(笑) 目の前に“推し”がいると、人はこうなるのだなと心から思いました。セーラームーンシリーズが終わるとき、感想を聞かれて「作品が終わるのはもちろん悲しいですけど、みちるに会えないのが最高につらいです」と真顔で答えたくらい(笑)。

 そんな時代を経て、なんと近年、ウラヌスとネプチューンのリップロッドが発売になり、「90年代当時のキャストで演じてほしい」というオファーがありました。スタッフの前では平静を装っていましたが気分はダダ上がり! 「初恋の人に久々に会える」と知った男性のように!(笑)

 でもこうした収録は通常ひとりで行うもの。急に心配になってきました。できるのか? あの空気を、ひとりで……? なので、「この役だけは、勝生さんと一緒じゃないとうまく雰囲気が出ないので、ふたり一緒に録らせていただけますか」とお願いしてみました。

 

ずるいじゃないか、みちる。置いていくなよ……僕を。

 結果ふたりで収録できることに! しかも録音スタジオは、当時『セーラームーン』のアフレコをしていた北新宿のスタジオタバック!(正確にはタバックの後継スタジオ。ビルの老朽化で取り壊しが決定していたのですが、まだ当時の設備は残ったままでした)

 そして音声録音は『セーラームーン』の各話演出のお一人だった佐々木憲世さんが担当してくださったんです。当時のスタジオとスタッフで、映像も当時のスクリーンに投映して、ふたりで掛け合いしながら収録する……夢のような光景でした。

 その出来事がのちに、私のアルバム『アニメグ。25th』で、勝生さんに「Moon Revenge」をデュエットしていただくことに繋がっていきます。勝生さんの声と私の声が、みちるとはるかとして、オクターブ上下で重なりあう。感動と感激で咽び泣きました……(笑)。いえ、本当に。幸せでした。

 何度でも巡り会ってしまう。はるかとみちるは永遠に。

 そうですよね? きっと。

2022.04.11(月)
文=緒方 恵美