近代日本を代表する美人画家として知られる鏑木清方の大規模な回顧展「没後50年 鏑木清方展」が、東京国立近代美術館で開催されています。

 着物スタイリストやモデルとして活躍するマドモアゼル・ユリアさんに、清方の美人画の魅力や楽しみ方について教えていただきました。


様々な要素を組み合わせて楽しむのが着物の醍醐味

――淡いブルー系の着物に、黒い長羽織を重ね、きりりと結い上げたヘアスタイル……まるで鏑木清方の美人画から抜け出してきたようなマドモアゼル・ユリアさんの姿に、思わず見とれてしまいました。今日のお召し物は、鏑木清方展のメインビジュアルにもなっている『築地明石町』をイメージされたものですか?

 ええ、そうです。着物は大正から昭和初期に作られたもので、この絵の背景にもある帆船が描かれています。ヘアスタイルも特徴的で、この髪型は明治時代特有の“夜会結び”なんですね。調べてみると髷(まげ)のような結い方をしていて。

 まったく同じ髪型にしたかったのですが、ちょっと現代風なアレンジになりました。

――いつも、着物のコーディネートはどんな風に決められるのでしょうか。

 行く場所やその日に会う人、季節などに合わせてテーマを決めて、組み合わせを考えます。例えば、お会いする人が好きなものや、その人を象徴するようなモチーフを取り入れてみたり。

 着物はワンピースなどと違って組み合わせなければ着られませんから、一枚の着物でも、帯や半衿、帯揚げ、帯締め、帯留めなど小物の使い方次第でがらりと雰囲気が変わります。

 洋服にはどうしてもデザイナーの思いが入り込んでしまうものですが、着物は誂えた人の思いがデザインに反映されます。また組み合わせで着るものなので、言ってみれば自分自身がデザイナーであり、スタイリストであるような感覚ですね。

――そう考えると、一枚の着物で、無限大のコーディネートを楽しむことができるわけですね。

 本当にそうなんです。ファッションが好きな方や、自分であれこれ組み合わせを考えるのが好きな方でしたら、着物にもはまると思います。

――ユリアさんは京都芸術大学では日本の伝統文化について学び、日本画もお好きとのことですが、鏑木清方の作品をご覧になってみてどんな感想を抱かれましたか。

 いま、京橋にある「加島美術」という画廊のウェブサイトで日本画にまつわるコラム「ユリアの日本画浪漫紀行」を連載していることもあって、資料を集めて勉強しているところなんです。

 これほど多くの作品を一挙に見られる機会をいただけて、本当に嬉しいです。

 写真で見て知っていた作品も、間近に見ると改めて気がつくことがたくさんあって、興味深いですね。

2022.04.05(火)
文=河西みのり
写真=三宅史郎