小田 お笑いは絶対にやりたいっていう熱意がないと無理なんでしょうね。私達がもしもっと積極的でプロになって大活躍していたら、M-1がアマチュアの登竜門みたいになってた未来もあるのかなと思うと、ちょっと悪いことしたかなっていう気持ちもあります。私らの後でもっと上手いアマチュアの人もいたやろうし、その人たちがM-1にどんどん出れるようになってたんかなあとか。

もう一度、M-1の決勝に出たかった

――翌年の第7回大会以降も毎年、M-1に挑戦され続けてきました。やっぱりもう一度決勝に出たいという思いがあったんでしょうか。

彼方 ずっとその気持ちでやってました。当時は出場資格が結成10年までだったので、それまでに絶対もう一回せめて準決勝、敗者復活戦には行きたいな、と。

小田 でも、2007年だけはちょっと悩みました。2006年の決勝が終わった後、やっぱりこんなとこに私らが来るのは違うかなって、来年はやめようかって一瞬だけ思ったんです。

彼方 今ほどじゃないけど、ちょっとネットに書かれたりとかもして、こういうことで芸能人は病むんやって思ったんですよね。面白くないとか俺らでも行けるとか、そういうのもありましたし、全くの嘘が書かれてることもありました。私はもともと劇団員だったんですけど、「ザ・ニュースペーパーにいた」とか。

小田 めちゃくちゃメジャーやん。そんなとこにおったらアマチュアなんて名乗られへんよな。あとは「もう芸能プロダクションに行くことが決まってて出てる」っていうのもあって、こんなにあることないこと書かれるんや、って思いました。でも意外に、プロデューサーとデキてるとかそんな記事は1個もなくて……(笑)。

彼方 1個ぐらいあってもいいのにね、枕営業で……とか(笑)。色恋の話は全く無くて、逆にびっくりした。

小田 あったらすごい傷ついたやろけどな。結局、出といたら良かったなと後々悔いが残るよりはと思って、2007年からも出ることを決めました。

 しかし、翌年の2007年大会からラストイヤーとなった2020年大会まで、変ホ長調は準決勝にさえ進むことができなかった。#2では、M-1が人気と知名度を上げるに連れて起こった変革と、最後まで決勝の舞台でのリベンジを目指した2人の漫才への思いに迫る。

撮影=鈴木七絵

#2に続く

「M-1を信頼しているんです」決勝進出した唯一のアマチュア『変ホ長調』がそれでも“プロ芸人”にならなかったワケ 《M-1は青春》 へ続く

2022.01.10(月)
文=「文春オンライン」特集班