「天才子役」から「考える女優」に成長
ご存じ、芦田さんの出発点は子役。ドラマ『Mother』(日本テレビ・2010年)で5歳としてはあまりにリアリティのある演技を見せつけ、「天才子役」と大喝采されました。翌年放送の『マルモのおきて』(フジテレビ)では、鈴木福くんとカップルで「マル・マル・モリ・モリ!」と踊ってみせて可愛らしさが全開に。
中学生になると天皇陛下の即位を祝う「国民祭典」で着物姿で堂々たるスピーチを披露し、かつての相棒・鈴木福くんも尊敬のまなざしで芦田さんの器の大きさを讃えました。
その芦田さんも今や有名進学校で学ぶ17歳の高校生。「品があって素敵」「すっきりと美しい女性に成長した」と評判はうなぎ登りで、新しいCMでは人工衛星になったり白衣姿でコンタクトレンズを薦めたりと活躍の幅を広げています。
そう、彼女は一見すると頭脳明晰な優等生的イメージ。しかし、そこに留まらない点がまた魅力的です。誰もが想像できる「芦田愛菜像」をきちんとやった上で、良い意味で予想を裏切っていく挑戦をしているから。
12歳にして「親殺しをしてしまう主人公」に抜擢
みんなが知っているメジャーな作品とは言えないかもしれませんが、記憶に残る芦田さんの姿があります。12歳の時に出演したフェイク・ドキュメンタリー『山田孝之のカンヌ映画祭』(テレビ東京・2017年)。
それは、世界的な映画賞カンヌ映画祭パルムドールを獲得すべく映画の制作を進めるプロデューサーを追いかけたドキュメント風ドラマでした。山田孝之さんが俳優としてではなくプロデューサーとして登場し、映画のノウハウを学ぶために大学に体験入学したり有名監督に話を聞いたり、スポンサー集めからキャスティング、撮影に至るまでをカメラが追いかけていく。
その映画の内容は親殺しの大量殺人鬼が題材となっていて荒唐無稽、いったいどこまでが現実でどこまでがフィクションかわからない。虚構と現実のあわいを狙ったカオスな作品でした。
2022.01.04(火)
文=山下柚実