延々とソロを弾く気にならなかった
JL&Cで初めて作ったスタジオ・アルバムが『Tricycle』。三輪車って名前が示すように、いろんなことに興味がある三歳児みたいな感じで、バンドとしていろんな実験に挑戦することができた作品だね。ジミヘンばりのハード・ブルース「Finger」から、爽やかな「Scooter」や「Balcony」、バンド結成の経緯を歌詞にした「Stories」までいろんな楽曲が入っていて……今思えば、子供がその辺にあるオモチャで手当たりしだい遊び散らかした感じだよね。
思い返してみると……JL&Cは俺のキャリアの中でも一番「ギターとの距離が遠かった」時期かもしれない。ギター・ソロを弾くことに命をかけるというより、どうやって新しいアンサンブルを作り上げていくかってことに心血を注いでいた。ジョニーとマーちゃんと一緒に演奏していると、延々とソロを弾く気にならなかったのも大きな理由だね。そんなことよりも3人が生み出すとんでもないグルーヴを聴かせたかった。
とんでもないトランス・ゾーンの演奏「MY DELICATE ONE」
バンドを長くやっていると……4~5年に一度、とんでもないトランス・ゾーンに入ることがある。そういう時は、3人ともお互いの目を見つめあって「俺たちすごいところまで行ったな」って感覚を全員で共有できるんだよ。プログレッシブに展開していく「MY DELICATE ONE」は、そんな俺たちの演奏がパッケージされた貴重な曲のひとつだよ。そうやって、ひとりでは到達できないような表現を体験してしまうと、本当に音楽がやめられなくなる。数年に一度しか体感できないってところが、また歯痒くもあるんだけどさ。
ある時から俺たちはスタジオやステージ以外では会わなくなっていった。子供が産まれたばかりの頃はお互いに交流もあったけど、学校に通い始めたりして生活スタイルが変化していくと、家族ぐるみで一緒に行動することにも限界が出てきて……ふたりで会うことはあったけど3人で何か一緒のことやるのは楽器を持った時だけになっていったんだ。
2021.12.19(日)
文=Masaya Bito