俺は海賊王になりたいと思っている。
(かきまぜ後)海賊王に俺はなりたいと思っている。
俺は海賊王になる夢を追いかけている。
(かきまぜ後)海賊王に俺はなる夢を追いかけている。
俺は海賊王になる夢を追いかけた後、地元に戻った。
(かきまぜ後)海賊王に俺はなる夢を追いかけた後、地元に戻った。
一番上のペアについては、どちらも問題ないと思う人がほとんどだろう。それに対し、二番目のペアについては、私はかきまぜ後の「海賊王に俺はなる夢を追いかけている。」がやや不自然だと思う。ただし、「意味は分かるし、別に問題ないよ?」と言う人がいてもおかしくない。しかし、一番下のペアの「海賊王に俺はなる夢を追いかけた後、地元に戻った。」については、私と同じく、強い違和感を覚える人が多いのではないだろうか。
「主節」と「従属節」の違いを意識する
ここで注目すべきは、冒頭に紹介した「海賊王に俺はなる。」では「俺は」と「海賊王に」がともに主節の要素であるのに対し、その後の三つの例では「俺は」は主節の要素で、片や「海賊王に」は従属節の要素だということだ。
従属節というのは、文の中に埋め込まれた「文っぽい部分」のことであり、主節はそれ以外の部分だ。「俺は海賊王になりたいと思っている。」では[海賊王になりたい]の部分が「と」によって導かれる従属節であり、「俺は海賊王になる夢を追いかけている。」では[海賊王になる]の部分が「夢」という名詞を修飾する従属節だ。「俺は海賊王になる夢を追いかけた後、地元に戻った。」でも[海賊王になる]の部分は「夢」を修飾する従属節だが、さらにそれを含む[海賊王になる夢を追いかけた]全体も「後」という表現によって導かれる従属節となっている。
つまり、この三つの例において、「海賊王に」はいずれも従属節の要素であるにもかかわらず、かきまぜ後には主節の要素である「俺は」よりも前に現れているのである。別の言い方をすると、主節と従属節の境界をまたいだ「かきまぜ」が起こっていることになる。
2021.12.16(木)
文=川添 愛