「映画に出る」のは叶わないことかなと勝手に思っていた

――とっかかりづらい藤本を、具体的にどう構築していったんですか?

 SABU監督とホン読みをしたときに、共通認識として、藤本は何事も続かない、やる気が出ない、情熱を捧げない、どこか冷めちゃっているところがある人物だね、と。そういう何かを面倒くさがったり続かないところは、俺にもめちゃくちゃあるな、と気づいたんです。これまで、何かにチャレンジしても三日坊主をいっぱいしてきたんですよ。そこは藤本の気持ちがすごくわかるなと寄り添って、理解しながら作っていった感じです。

――トレーラーでも流れているアクションシーンに関して。NAOTOさんといえば、『HiGH&LOW』シリーズに代表されるスタイリッシュなアクションが得意なイメージでしたが、本作は真逆の泥くさいアクションでした。型のないものは、大変でしたか?

 あそこは、もう、ほんとに大変でした。心情で言うと、藤本がこれまで制御してしまっていた自分の感情を、初めて解放するようなシーン。でも慣れていないから、どうやっていいかわからない、心と身体が追いついていない、そんなバランスでした。

 あのシーンは、SABU監督が演出や気持ちについて、自分に一番伝えてくれたんです。「格好悪いことが格好いいから、格好悪くなってほしい」、「アクションをキレイにするとかではなく、とにかくぐちゃぐちゃになってほしい」と。僕は監督の「ぐちゃぐちゃ」のイメージが、すごく腑に落ちて。

――それをアクションに投影したんですね。

 はい。普段は身体をぐちゃぐちゃにしないように、それこそどうやってキレイに格好良く見せられるかを意識しているので、真逆の発想でやりました。どうやったら格好悪く見せられるか、どうやったらぐちゃぐちゃに見えちゃうか。そこはすごくこだわって作ったアクションシーンです。

 やってみてすごく思ったのは、日頃からダンスをやっているから身体の見せ方とかは知っているじゃないですか。だから、外すほうに振るのもできるのか、と。『人間観察バラエティ モニタリング』でも、一流アスリートの方ができないふりをするんですけど、すっごい上手なんですよ! 身体の動かし方を知っている人は、うまくなく見せるのも得意なんだな、そのスイッチは似ているのかなと思いました。

――藤本は何事も続かないというお話でしたが、逆に言うと、NAOTOさんは今やられている役者やパフォーマンスはずっと続いているので、すごく大事に思われているということですよね。

 そうですね。結局、本当に好きだったり、心から楽しいと思うこと以外は淘汰されていってしまっているかな、と思います。今はダンスという軸があって、役者もやらせてもらったり、洋服を作らせてもらっているので、本気になれるものはこれなんだな、と思っています。

――ちなみに、NAOTOさんが俳優業をやりたくなったきっかけの作品というものはあるんですか?

 えー、きっかけですか! 学生時代からドラマや映画を観るのが大好きだったので、憧れはずっとありました。自分でもやりたいなと思ったのは、リアルに言うと、やっぱりEXILEになった後です。じゃないと、そういうことをあまり思えなかったので。

 僕は本当に普通のダンサーだったんです。活動していく中で、「映画に出たい」とはあまり思わないというか、叶わないことかなと勝手に思っていて、チャレンジすらもしていなかったので。

 EXILEになって初めてパフォーマーとしてこういう世界に入って、先輩たちが演じることをやっていたので、自然と「あ、俺も憧れの演技の世界に挑戦できるチャンスがきたのかも」と思いました。初めて演じるということでは、23~24歳くらいのときに舞台に出たんです。それが一番大きかったのかな、と思います。

2021.11.04(木)
文=赤山恭子
撮影=榎本麻美